【2008年 第6回 「地球温暖化」を考える】地域コラム 甲信越・北陸
田中 美紀子(タナカ ミキコ)
最近、「地球温暖化」という現象がよく取り上げられますが、なぜ地球が温暖化するのでしょうか。そして、その影響で地球上に一体何が起こっているのでしょうか。
温暖化の基本的なしくみは、温室効果ガス、特に二酸化炭素を大量に排出することによって地球の周りの薄い大気の層がだんだん厚くなったため、太陽エネルギーの赤外線が地球に反射して大気を抜けて宇宙に戻っていかずにとどまり、その結果地球の大気や海洋の温度を上昇させているものです
では、大気中の二酸化炭素の濃度は、どの程度上昇してきているのでしょうか。ハーバード大学のロジャー・レヴェル教授が、1958年からハワイのマウナロア島で二酸化炭素の濃度の測定を始めています。
その結果、1958年に315ppmだったのが2005年には381ppmに上昇、しかも毎年連続して上昇しています。(下図参照) 50年前に既に大気中の二酸化炭素の増加を予測し、そのことが地球上にもたらす弊害を危惧していた優れた科学者がいたことは驚嘆に値します。
最近の調査で、南極の氷柱の気泡に含まれた二酸化炭素の濃度を測定すると、65万年もの間、300ppmを超えたことはないそうです。現在の381ppmがいかに異常値であるかわかると思います。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、1860年以降の地表気温と海面温度の年間平均温度は上昇傾向にあり、特に1980年以降の上昇幅が大きいようです。
では、温暖化が進むことによって、地球上に何が起こっているのでしょうか。
北極・南極の氷、世界中の山岳氷河が溶けることによって海水面が上昇し、洪水が増加しています。また、赤道付近の海面温度の上昇により、ハリケーン・サイクロンの回数は増え勢力も強力になっています。
1970年代と比較すると1.5倍から2倍の強度だそうです。2005年にニューオリンズを襲ったハリケーン、この5月にミャンマーで起きたサイクロンでは現地は壊滅的な打撃を受けました。
一方、アフリカでは、降水量が著しく減少して干ばつが起き、砂漠化が進んでいます。
こういった気候の変動は人的被害にとどまらず、生態系により一層のダメージを与えています。
地球誕生以来30億年かかって進化してきた数千万種の生物のうち、温暖化だけが原因ではありませんが、1975年から2000年には平均4万種が絶滅し、2000年には6万種が絶滅してしまったそうです。生物の絶滅する数が加速しています。
世界の屋根といわれ、世界最高峰を戴く美しいヒマラヤ山脈、そこにも温暖化の影響が著しく現れています。ヒマラヤ地域には9000の氷河湖があり、氷河が溶け出しているため、そのうち200が近々決壊する恐れがあるそうです。そのひとつであるネパールのイムジャ氷河湖には3580万トン、東京ドーム32個分の水量があり、決壊すると数万人が被災することになります。
ヒマラヤ山脈を水源とし河口に位置するバングラデシュでは、ヒマラヤの氷河が溶けて洪水が増加し海水面が上昇しています。ある村では、毎年、川岸が削られており、この1年で1キロ侵食し、5000軒の家が流されてしまったそうです。
ネパール・バングラデシュともに即座に対策をとらなければいけない状況です。
先進国が大量生産・大量消費を享受し、車を持ち冷暖房完備の快適な生活を満喫して、二酸化炭素を大量に放出してきたそのつけが、今、最小値の二酸化炭素しか出していない開発途上国の人々に押し寄せてきているという「不合理な構図」が浮かび上がってきます。
温暖化の原因である二酸化炭素の削減は、次世代に美しい地球を残すために、国や企業の利害を超えて取組むべき課題であり、地球上に生きる一人一人が自覚してできることから始めるべき使命だと思います。
出典) EDMC/エネルギー・経済統計要覧2008年版
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