毎月の社会保険料の決め方【2011年 第6回】

【2011年 第6回】 毎月の社会保険料の決め方 ~社会保険(労働保険)~

菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール

4月~6月、残業が多いと保険料も高い? 給料から天引きされる社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)は金額も大きいですね。
では、この保険料はどうやって決められるのでしょうか。
それは4月から6月に支給される給料によって決定されます。
この3ヵ月、忙しくて残業が多かった人は、保険料が大幅に上げる可能性もありますよ

 

 

社会保険料計算の基準は標準報酬月額

毎月の社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)は標準報酬月額に保険料率をかけたものです。標準報酬月額とは、わかりやすくいうと、社会保険料を計算する上での基準となる「給料」です。
実際に支給される給料は、残業などによって多い月があったり、少ない月があったり。しかし、社会保険料は実際に支給された給料をもとにして保険料を計算するのではなく、基準となる「給料(標準報酬月額)」を決めておき、1年間(9月から翌年8月まで)、その「給料」をもとにして保険料を計算するというルールです。

入社時には、今後予定される給料で標準報酬月額を決定します。基本給が20万円、通勤手当が1万円だとすると、合計は21万円。標準報酬月額の等級表にあてはめると22万円の等級です。22万円に保険料率をかけたものが保険料。会社が半分負担するので本人負担は半分です。

標準報酬月額の見直し

しところが、給料は入社時と同じというわけではありません。昇給もありますし、給料が下がってしまうこともあるでしょう。もともと変動するものですから、変更も必要です。そのため、毎年決まった時期に標準報酬月額を見直しすることになっています。

その見直し作業を7月に行い、4月、5月、6月に支給された給料をもとにして、9月からの保険料を決定します。
4月とは4月に支給された給料、5月とは5月に支給された給料という意味です。
3ヵ月の平均を出すのですが、残業代も含めて平均を出し、標準報酬月額を決定します。決定した保険料は9月から翌年の8月まで。残業が少なく、給料が少ない月も同じ保険料を負担することになります。
また、4~6月は残業が少ないけれど、年末が忙しく残業も多くなるという職場もありますね。そのようなケースでも、残業のため給料が多くなったからといって、そこで保険料が上がるというわけではありません。

負担する保険料は少ないほうが良いと考える人も多いかと思いますが、標準報酬月額が高くてメリットになることはあるのでしょうか。
まず、病気やケガで会社を休み、給料の支給がない、あるいは少ないときには、健康保険から傷病手当金(健康保険からの休業保障)を受けられますが、これは標準報酬月額が多いほど、受け取り額も増えます。
ただ、病気をしなければ、メリットは感じらません。

標準報酬月額と年金

次に、すべての人に関係のあるのが年金です。
老齢厚生年金は、給料(標準報酬月額)やボーナス(標準賞与額)の平均で年金額を計算します。つまり、標準報酬月額が高いほど、年金も増える仕組みです。より多くの保険料を納付した人が、より多くの年金を受け取れるというしくみです。
今の保険料は将来受け取る年金額を増やしていると考えるといかがでしょうか。

今年4月に法改正があり、時期的に4月から6月までが忙しく、残業代も多いので、年間平均と比較して、標準報酬月額に2等級以上の差が生じる場合は、年間平均額で標準報酬月額を決定してもよいことになりました。
つまり、年間平均額が低ければ低い方を標準報酬月額としてもよいということになったのです。

ただし、毎年この時期だけが忙しくなるということの証明や本人の同意が必要になります。
同意を求められたら、どうするか、保険料の負担軽減を取るか、将来の年金を取るか、ちょっとむずかしいですね。

※     今回は詳細を省きましたが、途中で昇給した、手当が増えた、減ったなど、大幅に給料が変更になったときには、ルールにしたがって標準報酬月額は改定されます。

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