【2011年 第12回 】女性の働き方と社会保険・税金~103万円の壁・130万円の壁 ~社会保険(労働保険)~
菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール
11月になると、各職場で、収入調整をする人が増えて困っているという話を聞きます。
年末に会社がボーナスを支給しようとすると、ボーナスを辞退する人もいます。
せっかくボーナスが支給されるのにもったいないと思ってしまいますが、理由は扶養の範囲を超えてしまうからです。
扶養の範囲を超えて働くということは、ほんとに損をすることなのでしょうか。
夫サラリーマン、妻がパートの場合
夫がサラリーマン、妻がパートというケースで考えてみます。
所得税では、サラリーマンの夫は、扶養している妻がいれば、配偶者控除を受けられます。配偶者控除とは、妻を扶養しているのであれば、何かとお金もかかるだろうから、所得税負担を軽くしてあげましょうという制度です。
(妻が夫を扶養している場合、妻と夫が逆であっても同じことが言えます)
パートの収入が103万円までであれば、配偶者控除の対象となります。配偶者控除の額は38万円なので、税率5%の夫であれば、妻を扶養することにより、所得税が19,000円少なくなります。
103万円を超えると
では、103万円を超えてしまうとどうなるのでしょうか。配偶者控除は受けられませんが、配偶者特別控除があります。配偶者特別控除とは、パート収入130万円超141万円未満が対象となり、妻の収入が増えるにつれ、控除額が減っていくというものです。
この配偶者特別控除は、103万円を超え、配偶者控除が受けられなくなった場合、所得税が急激に増加することがないように配慮して設けられた仕組みです。
ですから、103万円を少し超えたからといって、大きな損をするわけではありません。
負担する所得税と増える収入を比較してみると、収入が増えれば手取りは増えます。
税金のことだけで考えると、103万円は大きな壁ではありません。
103万円の壁
では、なぜ、103万円のラインでの収入調整が多いのでしょうか。
それは、企業が支給する配偶者手当(家族手当)の支給基準を、103万円以下(配偶者控除対象者)としていることが多いからです。
この基準は企業が独自に決めますが、課税最低銀度額の103万円で定めているケースが多く、103万円を超えたら、配偶者手当をもらえなくなるので収入を調整しようということになります。
企業によっては、パート収入が103万円を超えたら、さかのぼって配偶者手当を返還すると定めているところもあり、そんなことになれば大変だと、収入調整することになってしまうのですね。
103万円が関係ない場合も
では、配偶者手当など支給されていなければ?
103万円にこだわる必要はありません。
夫が自営業という場合も、配偶者手当は関係ありません。関係がないのに収入調整しているケースも目につきます。
我が家の場合はどうなるのか、よく調べてみましょう。
では、103万円の壁を乗り越えても、次に待っているのが、130万円の壁です。この壁を超えてしまうと、健康保険料・国民年金保険料といった大きな負担が発生します。
収入が130万円以上(見込み)になると、健康保険の扶養家族や国民年金の第3号被保険者になれなません。気をつけたいことは、130万円の中には非課税の通勤手当も含むということです。
国民年金保険料は市区町村によって異なりますが、国民年金保険料は月額約1.5万円。これはちょっと大きいです。この持ち出し分を埋めようとすると、かなり収入を増やさなければなりません。
壁を乗り越えたら世界が広がるかも
現在、健康保険の扶養家族の基準が見直しされようとしますが、扶養の基準がきびしくなると、もっと働き方を調整して、自らの収入を少なくしてしまう人が増えるのでしょうか、
それとも、壁を乗り越えていく人が増えるのでしょうか。
調整するのか、もっと収入を増やしていくのか、目先のことだけではなく、生涯の収入で考えてほしいと思います。
確かに壁を乗り越えるには痛みを伴います。
103万円も130万円も所得の少ない配偶者のための制度ですが、壁を乗り越えるともっと広い世界があるかもしれません。
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