【2008年 第2回 利率だけで外貨商品を選んでいませんか?】地域コラム 東海
松山 智彦(マツヤマ トモヒコ)⇒ プロフィール
低利率の円建て預金、高利率の外貨建て預金
2006年の日本全国の預貯金残高698兆円。東海地方では、静岡県18.2兆円、岐阜県10.7兆円、愛知県37.6兆円。とはいっても昨今の低金利ではなかなか預貯金は貯まらず、収入減とあいまって、2001年764兆円、2005年736兆円と預貯金残高は近年減少傾向にあります。
そこでどうしても目についてしますのが円建ての預金と比べて利率が高い外貨預金です。
外貨預金は、米ドル、ユーロなど円以外の通貨で預金する金融商品です。外貨建ての金融相商品には外貨預金の他、外貨MMF,為替証拠金取引(FX)などがあります。外貨建て金融商品は確かに高い利率は魅力のひとつですが、果たして利率だけで選択していいものでしょうか?
利率とリスクの関係
例えば、預金利率に影響を与える日本の国債とアメリカの国債(どちらも満期まで10年)があります。為替は1ドル=100円とします。国債の利率は、日本=2%、アメリカ=5%とします。今、投資する資金が100万円用意できるとすると、さてアナタなら日本の国債、アメリカの国債、どちらを買いますか?
当然高い利率のアメリカの国債を選ぶと思います。さらに格付けまで考慮しますと日本がAA、米国がAAA(S&P、2008年2月5日現在)なので、アメリカの国債を選ぶはずです。
しかし、これに「期待リターン(収益)」という概念を持ち込むと「日米どちらも買ってよい」かむしろ「日本国債を買う」という選択が増えるかもしれません。通常、商品選択の項目が利率とリスクだけの場合、高い利率の商品はリスクも高くなる傾向にあります。
(ここでいうリスクは、債券満期日に元本が返って来ない可能性と考えて下さい。)
また、国債を発行する立場で考えると、もしもリスクが高い場合は、自国の国債を買ってもらうために利率を上げるなど、リスクの低いものに対して優位性を持とうとします。
これらの事からリスクとリターンの関係で日米国債を比較すると利率の高い米国国債はリスクが高いと考えられますので、格付けを判断項目としなければ、人それぞれの好みによって購入する国債が分かれると思います。
為替変動をさらに加えると
そこでさらに”為替変動”という商品選択の項目を入れみましょう。10年後の為替を1ドル80円と予想すると、満期における日米国債は
日本=100万円+100万円×2%×10年=120万円
米国=1万ドル+1万ドル×5%×10年=15000ドル
15000ドル×80円=120万円
になるので、どちらの国債を購入しても10年後の結果は同じになります。
つまり、アメリカは金利が高いのでリスクが高いと判断した場合、利率が低くリスクも低いという人が現れます。特に債券保有者はリスクを敬遠する傾向にあるので、利率が低くても低いリスクを求める傾向にあります。また、景気拡大局面においては、利率は低くなる傾向にあるので、それを見越して日本の国債を買う人も現れます。
その結果、日本国債を買うために外貨を円に交換する量が多くなり円高に振れて10年後は80円になるという予想になります。もちろん為替はこのケース以外の要因でも変動しますので、必ずしも10年後が80円なるとは限りません。
実は為替の動きというのは、投資のプロが現在の100円が10年後は80円という動きを見越して投資していると言われています。なので、必ずしも米国が有利であるとは限りません。このケースではどちらも「期待リターン(収益)」は同じで、それを見越して日本国債を買うプロ投資家も居ます。
利率だけでなく、景気、経済事情を考慮して
外貨商品を購入する場合には、なぜ高い利率なのか?他の投資家(つまり市場)はどう判断しているのか?を吟味するとともに、その国の景気・経済事情や地政学などを考慮して、商品選択をしましょう。少なくとも高い利率だけを理由に外貨預金を購入すると、思わぬ失敗をする事があります。
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