今、そこにある日本の食糧問題【2008年 第3回】

【2008年 第3回 今、そこにある日本の食糧問題】地域コラム 東海

松山 智彦(マツヤマ トモヒコ)⇒ プロフィール

 

 

 

 

 

 

アメリカの「3つ」の強みをご存知でしょうか?人口は3億人を超えるとともに出生率が「2.04」と先進国中唯一「2」を超えています。エネルギーは”石油メジャー”と呼ばれる巨大石油商社7社のうち5社が米国籍の企業です。そしてもうひとつは食料です。アメリカの食料自給率は128%で世界第3位(2003年・熱量ベース)。因みに1位は豪州の237%、2位はカナダの145%です。

では、日本はどうでしょうか?

人口は少子高齢社会で人口減が顕在化し、エネルギーは殆どありません。
日本料理は世界に誇れるものですが、食料自給率は40%という先進国の中では最低の数字です。その内訳は、おコメ・小麦などの穀物自給率は28%(主食用穀物61%)、野菜は80%、果実は39%(みかん99%、りんご53%)、肉類55%、鶏卵95%、乳製品67%、魚介類49%、海藻類65%、砂糖類34%、油脂類13%、きのこ類78%です。ただ、肉類、鶏卵、乳製品、魚介類については餌となる穀物類等は大部分が輸入に頼っているため純粋な自給率となるとさらに低くなると考えられます。参考までに東海地方の自給率は静岡18%、愛知13%、岐阜25%で全国平均よりさらに低くなります。
(農水省HPより2005年・熱量ベース、但し内訳は生産ベース)

食料自給率が100%を切っている事の問題は、ひとつには品質管理。食品を始め輸入品は検閲時には自国ルールで行われますが、全品検査をするわけにはいきません。それ以外のものについては輸入国のルールや慣習に頼っているという事になります。国内でさえも「偽装問題」が発覚したぐらいですから、慣習等が異なる外国産の場合にはさらに不安なケースもあります(ワインなど海外の方が国内より品質管理が進んでいる場合もあります)。

また最も大きな問題としては、何かのトラブルなどで外国からの食料が調達できない状況になった場合、自国民が飢えてしまうという事にあります。もしもそうなった場合に、すぐさま食糧生産できる土地はそう多くありません。またそういった土地に変えていくには、数年の時間が掛ります。つまり、有事の時に日本人の半分以上は飢えてしまうと言えそうです。日本の食糧のおもな輸入先は、米国22.1%、中国16.2%、豪州8.6%、カナダ6%になります。

では、なぜこれほどまでに食料自給率が低いのでしょうか?
さまざまな理由が考えられます。例えば価格。国内産よりも外国産のものが安いケースが多く、価格競争で負けてしまうものがあります。お米など一部の食料については農業政策などによって外国産の価格を調整する事で国内産の保護が図られているものもあります(りんごのように、外国産との競争に勝つために「高価格戦略」を取って成功した例もありますがそれでも自給率は53%です)。また、生活環境の変化により、料理をする時間、手間を省略するために加工食品や半製品などを使ったり、外食で済ませたりする機会が多くなった事も挙げられます。さらに食材の変化も挙げられます。お米中心だった戦前と比べ、戦後は小麦類や乳製品、肉類を好むようになり、国内の生産力では足りないので輸入により調達する事になりました。

では、食料自給率を上げるためには・・・。現在、3食のうち、2食はお米、1食はパンや麺類が一般的ですが、この1食をお米にする事で自給率が10%上ると予想されています。

しかし実現には難しいものがあります。また流通や生産の効率化を進めるというものもありますが、そうカンタンにはいきません。つまり、自給率を上げる速効的なものはないと言えます。私たちができる事を考えていくと、古典的ですが「食べ物を粗末にしない」ことかもしれません。なぜならば、700万トンもの食糧を捨てています。これは3食のうちの1食分に相当します。飽食の時代と言われていますが、本当は危機的状況だといえます。

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