新 商品先物取引のしくみ【2011年 第2回】

【2011年 第2回】新 商品先物取引のしくみ 投資コラム

三次 理加 ⇒プロフィール

「新 商品先物取引のしくみ」第2回目となる今回は、商品先物取引の歴史について紹介しましょう。

 

 

 

■金融先進国 日本!?

TV等のニュースで原油や金などの商品市況情報が報道される時、使用される映像は、シカゴやニューヨーク等の商品取引所風景がほとんどです。国内商品取引 所風景が使用されることはほとんどありません。今や金融といえば欧米が先進国。そのため、先物取引も欧米が発祥の地、と思われるかもしれません。

しかし、歴史上初となる組織的な先物市場は、1730年、ここ日本に誕生しました。
一方、アメリカにシカゴ商品取引所が設立されたのは1848年。日本に遅れること118年、1世紀以上も後のことです。
およそ280年前、金融の世界では日本が最先端だったのです。

■幕府公認だった商品先物市場

日本に世界最初となる組織的な先物市場が誕生したのは江戸時代。米将軍の異名を持つ八代将軍徳川吉宗の治世でした。
ご存知のように、江戸時代は米遣い=お米を中心とした経済でした。武士の給料のほとんどは、お米で支給されていました。しかし、お米でモノは買えません。そのため、武士がモノを買う際には、お米を売却してお金に換える必要がありました。
ここから両替市場として米相場が誕生。その後、財政の苦しい大名等 が収穫前のお米を担保に米商人から借金をするようになります。これが「空米(からまい=空の米切手)」として売買されるようになり、先物取引へと発展して いったのです。

このような米切手の売買や先物取引は、以前から行われていたようですが、米価の高騰、物価高を招くとして、幕府から再三にわたり禁止されていました。しかし、江戸や大坂の商人からの嘆願により、ついに1730年、大阪に幕府公認の堂島米会所が設立されるに至ったのです。

ちなみに、この時、米会所設立を許可したのはTVの時代劇でもお馴染み、「大岡裁き」で有名な大岡越前守忠相。現代における先物取引の仕組みのほとんどは、この時代に既に確立されていた、というのですから驚きです。

■商品先物は株式の先輩だった?!

ところで「商品先物取引は、株取引の先輩だった」ということをご存知でしょうか?
前述したように、日本において組織的な商品取引所が誕生したのは江戸時代。ご承知のように、この時代、株式会社はまだ存在していません。現代では「投 資」といえば株式や債券が一般的。
でも、日本に証券取引所が誕生したのは、なんと堂島米会所設立から148年以上も後のことです。

日本の証券取引所は、1878(明治11)年、「株式取引所条例」という法律の下に設立されました。実は、この条例、1876(明治9)年に施行された「米会所条例」と欧米の株式取引条例を参考に作られたものなのです。

■総合取引所は過去にもあった?!

2007年11月、証券と商品の総合取引所構想が打ち出されました。同年11月30日、経済財政諮問会議において、金融庁、経済産業省、農林水産省が証 券取引所と商品取引所の経営統合、資本提携を可能にする方向性で一致。年々、証券と商品の垣根は低くなりつつあります。近い将来、証券も商品も一つの取引 所で取引できるようになるでしょう。

あまり知られていないようですが、過去に、証券と商品が同じ取引所で取引されていた時代がありました。明治26年、証券と商品は「取引所法」という法律 の下に一本化されていたのです。
たとえば「神戸米穀株式外四品取引所」「西宮米酒」「若松石炭米穀」「岡山米いぐさ株式」「掛川米穀製茶」「長岡米穀株式 石油」「函館米穀塩海産物株式」等、今から考えると面白い名称の取引所も存在しました。名称からみる限り、当時における取引所の主要な上場商品はお米。加えて地域の特産品、次いで株式が上場されていたようです。
どうやらこの時代は、株式取引はまだ投資の中心ではなかったようです。

ちなみに、我が国史上最多の取引所数を記録したのは明治31年。当時の取引所数はおよそ130カ所(注)、取引所乱立期ともいえる時代でした。

次回は、「商品先物取引の特徴」について紹介します。

※注:当時の取引所数は、東京証券取引所によると137カ所。一方、東京穀物商品取引所発行『東京米穀取引所史』によると128カ所とあり、正確なところは不明。

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