【2011年 第3回】新 商品先物取引のしくみ 投資コラム
三次 理加 ⇒プロフィール
商品先物取引の特徴(1)取引所、資金効率
「新 商品先物取引のしくみ」第3回目となる今回は、商品先物取引の特徴について紹介します。
第1回目に説明したように、改正前の「商品取引所法」は、国内商品取引所における商品先物取引のみを規制の対象としていました。
一方、改正法である「商品 先物取引法」は、国内・海外商品取引所、店頭商品先物取引の全てが規制対象となりました。
ただし、本コラムにおいては、原則として、国内商品取引所におけ る商品先物取引について説明します。
○商品先物取引の特徴
商品先物取引には、主に以下5点のような特徴があります。
1)取引所取引である
2)資金効率が良い
3)売りからも取引できる
4)決済期限がある
5)現金以外に、株や国債などの有価証券も資金として使える
今回は、上記1)2)について説明します。
1)取引所取引である
投資家が上場株の取引をする際には、証券会社を通じて「証券取引所」に注文を出します。投資家が直接、証券取引所に行っても注文を出すことはできません。現在、証券取引所は全国に5か所あります。これら取引所は金融庁の管轄下にあります。
商品先物取引の売買も株と同様、商品先物取引業者を通じて「商品取引所」で行われます。2011年1月末日、中部大阪商品取引所がおよそ60年の歴史に 幕を下ろしました。これにより2011年2月現在、国内に存在している商品取引所は、東京工業品取引所、東京穀物商品取引所、関西商品取引所の3か所とな りました。東京工業品取引所は経済産業省、東京穀物商品取引所と関西商品取引所は農林水産省の管轄です。
なお、東京穀物商品取引所は、2011年中に農産物市場を東京工業品取引所に移管する見通しです。そのため近い将来、国内商品取引所は2か所になると思われます。
2)資金効率が良い
商品先物取引は、総取引金額のおよそ3~10%程度の資金で取引を開始することが可能です。この資金のことを「証拠金」といいます。そのため、非常に資金効率が良い取引といえます。具体例でみてみましょう。
例1)
金の価格上昇を予想し3,300円/gで金先物を1,000g買い、その後、3,800円/gに上昇した時に決済。必要な当初証拠金は117,000円(※1)とする
この時、利益は、(3,800円-3,300円)×1,000g=500,000円。
金の現物1,000gを使って同様の利益を期待する場合、最初に330万円余りの資金が必要となります。一方、商品先物取引の場合、当初必要な資金は証拠金117,000円。
金現物も金先物も、その価格変動は、ほぼ同様となります。そのため、どちらを利用して投資を行っても利益はほぼ同じ、50万円となります(※2)
つまり、金現物投資に比べると、金先物取引のほうが資金効率は良いといえます。
しかし、相場というものは、常に利益になるとは限りません。では、予想に反して価格が下落し、損失となった場合はどうなるのでしょうか?
例2)
金の価格上昇を予想し3,800円/gで金先物を1,000g買い、その後、3,300円/gに下落した時に損失覚悟で決済。必要な当初証拠金は117,000円とする。
例1と全く逆のパターンです。損失は、(3,300円-3,800円)×1,000g=-500,000円
しかし、最初に出した資金は、証拠金117,000円。つまり、383,000円の資金不足となってしまいます。
当初必要な資金は117,000円と少額であっても、動かしている資金は金1,000g分、およそ380万円前後の資金となります。それに伴う損益が発生 するため、証拠金に比して利益も大きくなる半面、損失も大きくなります。例2のように、当初資金を上回る損失となることもあるため注意が必要です。
そのため、商品先物取引には重要なルールがあります。これについては、第8回で改めて説明します。
なお、2011年1月から損失限定取引「スマートCX」が新設されました。「スマートCX」とは、「初期投資額を上回る損失が発生するおそれのない商品先 物取引」のこと。証拠金取引初心者は、このような取引形態を利用するのもひとつの方法でしょう。「スマートCX」については、第9回で改めて紹介します。
次回は、「商品先物取引の特徴」の3)~5)について紹介します。
注)
※1 2011年1月以降は、SPAN®に準拠した証拠金制度に変更。証拠金の額は会社により異なる。
また、実際に取引する際には、委託手数料と委託手数料に係る消費税が必要となる。
※2 手数料を考慮すると、金先物取引のほうが利益額は大きくなる。
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