損失限定取引「スマートCX」【2011年 第9回】

【2011年 第9回】 損失限定取引「スマートCX」 投資コラム

三次 理加(ミツギ リカ) ⇒プロフィール

第3回で説明したように、商品先物取引は、少ない資金(=証拠金)で大きな資金を動かせる取引です。そのため、資金効率が良く利益も大きくなる半面、損失も同様に大きくなります。
そこで個人投資家保護の観点から、今般の法改正に併せ、2011年1月から損失限定取引「スマートCX」が新設されました。

第9回となる今回は、損失限定取引「スマートCX」について説明しましょう。

 

 

○損失限定取引「スマートCX」とは?

 損失限定取引「スマートCX」とは「初期投資額を上回る損失が発生するおそれのない商品先物取引」のことです。「スマートCX」における最大の損失額は、当初差し入れまたは預託した証拠金額を上回ることがありません。一方、利益については、通常の商品先物取引と同様に追求することが可能です。

「スマートCX」では、取引開始時に、投資家と商品先物取引業者との間で「ロスカット水準」と「ロスカット限度水準」の価格および証拠金額等について契約を締結します。つまり、「これ以上の損失は出さない」水準で合意し、それに見合う証拠金額を差し入れまたは預託するのです。

「スマートCX」の仕組みは、以下の通りです。

新規に買い(または売り)注文が成立した後、市場価格が予想に反して不利な方向に動き、価格がロスカット水準に達した場合、それ以上の損失拡大を防ぐため、自動的に手仕舞い(=決済)の注文が出されます。これをロスカット注文といいます。通常は、ロスカット注文が成立することにより、この取引は終了します。(例 ①参照)

しかし、急激な相場変動等により市場における売買注文が買い(または売り)だけに集中し、「手仕舞いの買い注文が成立しない(または売り注文が成立しない)」という事態に陥った場合、ロスカット注文が成立しないこともあり得ます。仮に、ロスカット注文が成立せずに値洗い損(=含み損失)がさらに拡大し、ロスカット限度水準に達した場合、商品先物取引業者は、商品取引所が定めるルールに則って、投資家の注文をロスカット限度水準で成立させ(=ストップロス取引)、取引を終了させます。(例 ②参照)そのため、損失額は、当初差し入れまたは預託した証拠金額を上回ることはありません。

ちなみに、ロスカット限度水準は、商品取引所が過去における値動きを参照し基準となる変動率を定め、商品先物取引業者はそれ以上の額をロスカット限度水準として設定します。そのため、ロスカット限度水準は商品ごと、商品先物取引業者ごとに異なります。

○「スマートCX」における証拠金額と損失額

 以上の仕組みにより、「スマートCX」における損失額は、新規に買った(=または売った)値段からロスカット限度水準までの値下がり(=または値上がり)に伴う金額を超えることはありません。たとえば図1の場合、

(4,200円-4,500円)×1,000倍×1枚=300,000円 が最大の損失額となります。

「スマートCX」では、価格がロスカット限度水準に達した場合に生じる損失金額以上の額が証拠金として設定されます。たとえば上記例 の場合、30万円以上の額が証拠金となります。そのため、損失となった場合であっても当初差し入れまたは預託した額を超える損失が発生するおそれはない、ということになります。

「スマートCX」の提供の有無や実際の運用は、商品先物取引業者により異なる場合がありますが、証拠金取引初心者は、このような取引から始めることをお薦めします。

 次回以降は、商品先物市場の機能について説明します。

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