相続・贈与のエトセトラ①~相続税が増税になる!?~【2011年 第1回】

【2011年 第1回】 相続・贈与のエトセトラ①~相続税が増税になる!?~ 

平川すみこ(ヒラカワ スミコ) ⇒プロフィール

このコラムでは、相続と贈与に関して知っておきたい話題をあれこれお伝えします。
平成23年度の税制改正では相続税の大きな改正が予定されていて、課税対象者が5割アップすると試算されています。これは一体どういうことでしょうか?
我が家も相続税がかかるようになるのか、気になるところですね。

 

 

 

昨年より相続税は少しずつ増税方向へ改正がすすめられています。そしていよいよ、平成23年度の税制改正で、「基礎控除の縮小」という大幅な改正が予定されています。これによって、相続税の課税対象者が従来の5割ほど増えるのだとか。

つまり、これまでであれば相続財産が基礎控除額以下しかなく、相続税がかかる心配をしなくてよかった方たちでも、基礎控除が縮小されることで相続税がかかるようになる方たちが増えることになります。

■相続税がかかる人はどれくらいいる?

現在は、相続税がかかる課税対象者はそんなにいるわけではありません。
年間死亡者数100人あたり4人程度、つまり約4%くらいなのです。

参考「平成21年分の相続税の申告の状況について(国税庁)」

  • 被相続人数(死亡者数)約114万人(前年約114万人)
  • 相続税の課税対象となった被相続人数 約4万6千人(前年約4万8千人)
  • 課税割合 4.1%(前年4.2%)

え?こんなに少ないの?と思いましたか?
なぜ、こんなに少ないのでしょうか。

その理由のひとつに相続税の「基礎控除」が大きいことがあります。
現在の基礎控除の額は、次の算式で求められます。
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

例えば被相続人Aさんの相続人が配偶者と子ども2人の計3人だとすると、基礎控除額は8,000万円です。Aさんの相続財産の「課税価格の合計額」(※)が、8,000万円以下であれば、相続税はかからないということになります。

■どれくらい基礎控除が縮小されるのか?

現在の基礎控除の算式になったのは、平成6年度の税制改正で、昭和63年の相続税の抜本改正以降、基礎控除は拡大されてきたという歴史があります。
ですが、相続財産の多くを占める土地の評価額が下がっていったため、拡大した基礎控除のままだと課税されない人が増えてきてしまいました。
そこで、ここで基礎控除を縮小して課税対象者を増やそうということになったんですね。

改正されると基礎控除の額は、次の算式になります。
3,000万円+600万円×法定相続人の数

先ほどのAさんの場合、改正後の基礎控除額は4,800万円。
現在の6割に縮小されることで、相続財産の「課税価格の合計額」が、4,800万円を越えると、相続税はかかるようになってしまうというわけです。

相続税の対象となる相続財産には現預金や株、不動産といった財産以外に、生命保険金も含まれてきます。そんなに財産ないけど~と思っていても、自宅の土 地・建物(条件によっては評価減の特例あり)と生命保険金で、基礎控除額を上回ってしまうということもでてくるかもしれませんね。

■我が家の財産を整理しておこう!

この基礎控除の縮小によって、相続税の課税対象者が 約4万6千人から、5割増しの約7万人に増えると試算されています。

それでも課税割合は6%程度。我が家には関係ないわね~という方のほうが大勢ではあるのですが、相続税の課税対象になるかどうかは、財産の価額と相続人の人数で決まってきます。財産がすごくたくさんあっても、相続人がたくさんいれば相続税がかかってこないという場合もあれば、財産は少ないけど、相続人が少ないので相続税がかかってくるという場合もあります。

ですから、一度、ご自身の相続財産はどれくらいになりそうか確認してみておくことが大事ですね。そして財産目録を作っておかれるいと良いのですが、書き方がよくわからないといいうこともあるかと思いますので、市販されている「エンディングノート」の財産の一覧表のご利用をおすすめいたします。

(※)課税価格の合計額は、被相続人の債務・葬式費用を控除し、相続開始前3年以内の被相続人から相続人等への生前贈与財産価額および相続時精算課税適用財産価額を加えたものです。

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