相続・贈与のエトセトラ⑧~生命保険金に相続税はかかる?~【2011年 第8回】

【2011年 第8回】 相続・贈与のエトセトラ⑧ ~生命保険金に相続税はかかる?~

平川すみこ(ヒラカワ スミコ) ⇒プロフィール

このコラムでは、相続と贈与に関して知っておきたい話題をあれこれお伝えします。

 

前回も触れましたが、生命保険金は相続税の課税対象となります。

といってもすべての生命保険金が相続税の課税対象となるわけではなく、次のような保険契約で保険料負担者であり、被保険でもある被相続人が死亡した場合に、受け取った保険金(保険料負担者が他にもいる場合は、そのうち被相続人が負担していた保険料の割合分)が相続税の課税対象となるのです。

 

 

 

参考までに、次のような場合は相続税の課税対象とはなりません。でも、別の税金の課税対象となりますのでご注意を。

 

 

 

 

 

 

■生命保険金の非課税限度額とは?

相続税の課税対象となる生命保険金には、一定金額まで非課税となる限度額が設けられています。これは、被保険者亡き後、遺族の生活資金等になる保険金ですから、受取金全額が課税対象となるのはいかがなものか、という国の計らいでしょう。
ちなみに、上述の(あ)(い)の場合は、非課税限度額はありません。いずれも被相続人が死亡して受け取る生命保険金ですが、課税対象となる税金によって扱いが異なるんですね。

相続税における生命保険金の非課税限度額は、現在は次の算式で求めた金額となります。

 

 

(注:相続を放棄している者は放棄していないものとして数え、養子がいる場合は人数制限があります。)

例えば被相続人Aさんの相続人が配偶者と子ども2人の計3人だとすると、非課税限度額は1,500万円。Aさんの配偶者や子どもたちが死亡保険金を3,000万円受け取ったとすると、非課税限度額を超える1,500万円だけが相続税の課税対象になります。

「現在は」としたのは、この「法定相続人の数」の算出の方法が改正となるかもしれないからです。この改正予定につきましては、第2回のコラムでご紹介していますので、そちらを参照してください。

■非課税限度額は相続人にしか適用できない!

ところで、この非課税限度額は相続人でなければ適用することができません。つまり、生命保険金を受け取ったのが、相続人以外の者である場合、非課税の適用がないので、受取額がまるまる相続税の課税対象となります。
相続人以外の者には、相続放棄をした者も該当します。例えば、保険金受取人を長男としていた場合。被相続人の死亡後に、長男が相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったものとなります。
相続人ではなくなっても、長男は受取人として指定されていますので、生命保険金を受け取ることはできます。そして、受け取った生命保険金は相続税の課税対象となるのですが、相続人ではなくなっていますので非課税の適用は受けられません。

また、もちろん、孫(代襲相続人となる孫等は除く)や、内縁関係の妻または夫、離婚した配偶者、子の配偶者(養子となってる場合を除く)などは相続人ではありませんので、受け取った生命保険金には非課税の適用はないのです。

■分割で受け取る生命保険金の課税はどうなる?

年金形式で受け取る生命保険金は「年金受給権」が相続税の課税対象となります。ただし、課税対象となる金額は、受け取り総額ではなく、一時金で受け取るとした場合の金額(もしくは解約した場合の解約返戻金相当額かのいずれか多い金額)です。なお、相続人が受け取る場合は、上述の非課税金額の適用があります。

そして、毎年受け取る分割した保険金については、受取人の所得として、課税部分が所得税・住民税の課税対象となります。ただし、受取り初年度は全額非課税で、2年目以降から課税部分が段階的に増加していく方式が取られています。

*****

以上のように、生命保険金は相続税の課税対象となるわけですが、今後の税制改正の動向により相続税が課税される方が増えてくると、なにかと懸念事項も増えてくると考えられます。

現在の相続税の計算方法は、まず相続財産全体から「相続税の総額」を求め、それを実際に財産を取得した者が、取得した割合分負担するという方法です。そうすると、生命保険金を多額に受け取る方がいると、その分も含めて「相続税の総額」を算出するので、各人の相続税も増えることになります。

生命保険金を受け取らない人からみると、生命保険金を受け取る人、ましてやそれが相続人でない方であったりした場合、相続税が原因で確執が生じてしまうこともあるかもしれません。
生命保険金を契約もしくは見直される場合は、相続税のことも念頭において検討をしていく必要があるでしょう。

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