【2011年】 地味だけど大切なこと -投資信託のコストについて-
恩田 雅之(オンダ マサユキ)⇒ プロフィール
投資信託の3つのコスト
最近、高い分配金を毎月出す投資信託に人気が集まっていますが、長期運用する時には、投資信託で資産運用するときのコストにも注意を払いましょう。
投資信託のコストは、大きく3つあります。
1.購入時にかかる「購入時手数料」。
2.保有期間中のかかる「信託報酬」。
3.換金時にかかる「信託財産留保額」。
購入時手数料
最初に購入時手数料についてみていきましょう。
購入時手数料が、3%のAファンドと0.5%のBファンドが両方とも基準価額が10,000円(1万口あたり)の時に100万円購入します。購入できる口数(小数点以下切り捨て)は、
Aファンド 100万円÷10,300円(手数料込)×1万口=970,873口
Bファンド 100万円÷10,050円(手数料込)×1万口=995,024口
個別元本*1は、A、Bファンドとも10,000円になりますが、購入時の手数料の違いで購入できる口数が異なります。
*1:個別元本・・各投資家の課税上の購入金額
仮に両ファンドとも、1万口あたり50円の分配金が支払われたら、100万円を投資して受け取れる分配金は、
Aファンド 970,873口×50円÷1万口=4,854円
Bファンド 995,024口×50円÷1万口=4,975円
となります。
両ファンドとも基準価額が10,000円と変動がないとした場合、購入時手数料の違いよる購入できる口数の違いから、BファンドはAファンド比べ 4,975円-4,854円=121円多く受け取ることになります。運用方法と運用対象が同じようなファンドでどれにしようか迷ったら、購入時手数料の差に注目してみましょう。
保有期間中にかかる信託報酬
次に、保有期間中にかかる信託報酬についてみていきます。
信託報酬とは、保有しているファンドの純資産に対して日々かかる費用になります。
信託報酬は年率 何%というかたちで目論見書等に記載されています。
仮に信託報酬が2%のファンドを5年間保有した場合は、2%×5年=10%になり、運用によって5年間に純資産(受取った分配金分を含む)の額が10%以上増えないと、5年後に純資産が減ってしまうことになります。
また、5年間の運用成績がマイナスになった場合でも信託報酬は掛かります。
長期の保有を考えたときには、購入時手数料の差より信託報酬の差による影響が大きくなることを覚えておきましょう。
では、運用方法と運用対象が同じで信託報酬が異なる2つファンドで計算してみましょう。Cファンドの信託報酬 2%、Dファンドの信託報酬 1%とします。計算を簡単にするために信託報酬1年分を年末に純資産から差し引くことにします。
Cファンドは年初の純資産が100万円、年末に105万円になりました。
105万円から信託報酬2%分を差し引くと純資産は102.9万円になります。
1年間の運用利回りは、(102.9万円-100万円)÷100万円×100%=2.9%です。
Dファンドも年初の純資産が100万円、年末に105万円になりました。
105万円から信託報酬1%分を差し引くと純資産は103.95万円になります。
1年間の運用利回りは、(103,95万円―100万円)÷100万円×100%=3.95%です。
1年間の比較ですが、Cファンドは、信託報酬が高い分だけ運用利回りがDファンドより低くなりました。Cファンドが、Dファンドを上回るにはDファンドよりも1%以上高い運用利回りが必要になります。
長期に運用した場合は、信託報酬分を差し引く前の運用利回りで、CファンドのほうがDファンドより上回る年が何回かあるかもしれません。しかし、Dファンドは毎年確実に信託報酬の差で1%のアドバンテージがことを覚えておきましょう。
信託財産留保額
最後に、信託財産留保額についてみていきましょう。
ファンドを換金しますと、換金申し込み日の翌営業日の基準価額から信託財産留保額を差し引いた金額で換金されます。(ファンドの中には、信託財産留保額を取らないものもあります。)
仮に、信託財産留保額が0.3%、換金申し込み日の翌営業日の基準価額が11,000円として計算しますと、信託財産留保額は11,000円×0.3%=33円になります。
そして、換金される資金は、11,000円-33円=10,976円になります。
1万口に対して33円分の換金したことによりコストが掛ったことになります。
ファンドによっては、販売時手数料が掛かからないファンドや、信託財産留保額が掛からないファンド、上記の3つのコスト以外のコストが掛るファンドなどがあります。興味のあるファンドが見つかったら目論見書などで確認しましょう。
今夏は、「節電の夏」、投資信託も3つのコストに注目し、運用経費の節約を考えてみてはいかがですか。
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