介護をとりまく現況~ 今、介護はどう なっているのか、考えてみよう ~【2014年 第1回】

【2014年 第1回】 介護をとりまく現況~ 今、介護はどう
なっているのか、考えてみよう ~- 介護保険法改正でどうなる、介護のお金

浅川 陽子(アサカワ ヨウコ) ⇒プロフィール

 

介護保険法改正で、介護サービスを受けている利用者の一部に負担が増加しま
す。これから、6回にわたり、介護の現況と、介護保険法改正で介護に関する給
付と負担がどのようにかわるのかについて、紹介していきたいと思います。

 

 

 

 

 

介護をとりまく現況

少子高齢化が進展する中、高齢者の介護を社会全体で支えていこうという趣旨で、2000年に「介護保険制度」が導入されて13年が経過しました。

平成25年10月現在で、要介護(要支援)認定者は578万人、これは65歳以上の人口の約17%を占め、介護保険から給付される費用は9兆円を超えています。介護を受ける高齢者の増加に対して、持続できる介護保険制度を目指して見直しを行った、介護保険法の改正案が審議されることになっています。

介護保険法改正での変更についてとりあげる前に、まずは介護をとりまく現況についてみていきましょう。

1. 大介護時代がやってくる! ~ 2025年問題
WHO(世界保健機関)によれば、日本人の健康寿命は75歳で世界1位だそうです。
健康寿命の定義は「日常的に介護を必要としないで、自立した生活を送れる生存期間」になります。言い換えると、日本では、75歳を過ぎると、介護を受ける確率が高くなるということです。下表の年代別要介護認定者率を見ても、75歳を超えると10%を超え、80歳を超えると4人に1人、85歳以上では、2人に1人が何かしらの介護が必要だということになっています。

日本では、現在、65歳以上の人は3000万人を超えています。人口における65歳以上の比率を「高齢化率」といい、この比率が7~14%で「高齢化社会」、14~21%で「高齢社会」、21%以上は「超高齢社会」とよばれ、日本は2007年に「超高齢社会」に突入しました。2010年の高齢化率は23.0%、この内75歳以上の比率は11.1%を占めています。さらに2020年の推定値は29.1%、75歳以上は15.1%、2025年の推定値は30.3%、75歳以上は18.1%とされています。

介護を含め高齢者福祉を考える場合、「2025年問題」といわれることがありますが、これは2025年以降、団塊世代が75歳以上になるということで、介護等が必要になる高齢者の増大が予想され、その対応策が大きな課題となってくるからです。すでに、2011年にスタートしたサービス付高齢者向け住宅は、高齢者が安心して暮らせる住宅の確保をめざし、10年間で60万戸を目標に建設が進められていますが、これも「2025年問題」を念頭にいれた施策の1つといえるでしょう。

2. 介護の担い手 ~ 介護は2度やってくる?
家族に介護が必要になった時に、誰が介護を担っているのか、下記の表は、国民生活基礎調査結果で、介護保険が始まった直後の平成13年と直近の平成22年を比較したものです。

どちらも、「配偶者」の割合が1番高く、2番目に高いのが、平成13年では「同居する子の配偶者」ですが、平成22年では「同居の子」に移っています。「同居する子の配偶者」というと、おそらく嫁をさしているものと思われますが、平成22年になると、この嫁の割合が減り、「同居の子」の比率が高くなります。

子が結婚せず、親と同居するケースも増えており、同居する娘だけでなく、息子も担い手になっていると推測されます。また、別居家族の割合も増加しており、「遠距離介護」という言葉が使われるようになった背景を裏付けているのかもしれません。
介護の担い手の男女比率では、男性3割、女性7割と、女性の比率が高いですが、男性の比率も年々上昇しているようです。担い手の年代別で見てみると、50代で比率が急増します。

50~60代では、おそらく介護されるのは親世代、70代では親もしくは、配偶者、80歳以上は配偶者の介護と思われます。親の介
護が終わって、しばらくして今度は配偶者の介護が始まる、「介護は2度やって来る」というケースも多くなっていくかもしれません。

平均以上の長期にわたる場合も

3. 介護の期間 ~ 平均は約5年
家族に介護が必要になると、家族にはいろいろな負担がかかります。アンケート調査の結果等でみると、家族にかかる負担の内、主なものは、①肉体的負担、②精神的負担 ③経済的負担の3つが挙げられます。これらの負担は介護の期間が長くなればなるほど、重くなっていくと考えられます。

実際に、どのくらいの期間、介護をしたか、生命保険文化センターの調査によれば、平均が4年9ヵ月となっています。介護に備えるお金を試算する場合、よく5年という期間が使われることが多いのですが、このあたりのデータが基になっているようです。ただし、期間の内訳をみてみると、4年以上10年未満が33.9%、10年以上が12.5%で合計すると約46%、半分近くの方が4年以上の介護に関わっていることになります。介護が始まると、いつまで続くのか先が見えませんから、平均以上の長期にわたる場合もあるという覚悟は必要になるでしょう。

次回(4月)のコラムでは、介護にかかる費用について取り上げる予定です。

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