任意後見契約の終了 【2014年 第6回】

【2014年 第6回】 任意後見契約の終了  任意後見契約の解除と変更、終了について

三次 理加プロフィール

任意後見契約を締結後、契約をやめたくなった時や、契約内容を変更したくなった時はどうすればいいのでしょう?また、任意後見契約が終了する時はどんな時?
本稿では、任意後見契約の解除と変更、終了について説明します。

1) 任意後見契約の変更

任意後見契約を締結した後、その契約内容を変更したくなった時は、どうすれいいのでしょうか?変更内容の主なものとしては、下記3通りが考えられます。

①代理権に関する内容の変更: 代理権の範囲の変更と代理権行使の方法変更の2通りがあります。
I. 代理権の範囲の変更: 代理権の追加、一部削除の2通りがあります。

ア. 代理権を追加: 代理権を追加する方法は、下記2通りがあります。
一般的には、a.を選択することが多いようです。
なぜならば、b.の場合には、代理権の範囲を証明するために複数の登記事項証明書が必要となるためです。
a. 既存の任意後見契約を解除し、新たに任意後見契約を作成、締結する。
b. 既存の任意後見契約を維持したまま、追加した代理権を付与する任意後見契約の公正証書を作成する。

イ. 代理権の一部を削除: 契約の一部解除は許されていないため、全部を解除したうで、新たに任意後見契約を作成、締結する。

II. 代理権行使の方法変更: 既存の任意後見契約を解除し、新たに任意後見契約を作成、締結します。
たとえば、代理権の行使について、複数の任意後見受任者と共同行使としていたものを、それぞれ単独で行使する内容に変更する場合等が挙げられます。

②上記1以外の事項の変更: たとえば、報酬額の変更等が挙げられます。この場合、公正証書により変更契約を行います。公正証書以外の契約書等による変更契約は認められないので注意しましょう。

③ 任意後見人の変更: 既存の任意後見契約を解除し、新たに任意後見契約を作成、締結します。

2) 任意後見契約をやめたくなった時(任意後見契約の解除)

任意後見契約の解除は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する「前」か「後」かで、手続きが異なります。
第2回で説明したように、任意後見監督人選任前は、本人または任意後見受任者は、いつでも契約を解除することができます。

ただし、公証人の認証が必要です。任意後見監督人選任後は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、契約を解除することができます。
解除を希望する場合には、家庭裁判所に「任意後見契約の解除許可申立書」を提出します。申立てができるのは、本人または任意後見人です。
なお、任意後見監督人選任の「前」「後」のいずれであっても、任意後見終了の登記を申請する必要がありますのでお忘れなく。

3) 任意後見契約の終了

任意後見契約が終了するのは、どのような時でしょう?上記2)の任意後見契約の解除のほかには、下記2つが挙げられます。いずれの場合も、後任の任意後見人を探す必要があります。その時に既にご本人の判断能力が不十分となっていれば、任意後見ではなく、法定後見を検討することになります。

① 任意後見人の解任
任意後見人に不正行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由がある時は、家庭裁判所は任意後見人を解任することができます。
解任請求ができるのは、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官です。

②民法上の終了要因
民法653条により、下記の場合には任意後見契約は終了します。終了後、任意後見終了の登記を申請する必要があります。

 

 

 

今回で「任意後見制度の概要と実務」は最終回です。長期間にわたりご高覧いただき、誠にありがとうございました♪

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