2014年 第3回 サラリーマンの妻なのに第3号になれない? 年金ミステリー
菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒プロフィール
妻や子でなければ受け取れなかった遺族基礎年金が、4月から夫も対象に加えられます。このように年金制度の男女差は少し改善されましたが、もともと年金制度は女性を優遇する制度と言えます。サラリーマンに扶養される妻は、国民年金保険料を負担することなく、老後の年金を受け取ることができます。しかし、サラリーマンの妻なのに国民年金の保険料を請求されたA子さん。こんなことがあるのでしょうか。
45歳のA子さん
45歳のA子さん、昨年再婚しました。夫は64歳。世間でいう「年の差婚」です。長い間苦労を重ねてきたA子さんは、頼れる夫とともに、これから幸せになりたいと願っています。
再婚を機に、仕事はやめました。夫は会社を経営していましたし、夫にはかなりの財産もありましたから、今からは夫といっしょの時間を大切にしたいと思いました。
仕事を辞めたA子さんは夫の扶養家族となりました。健康保険は扶養家族として加入、年金は第3号被保険者となりました。 A子さんはこれまで国民年金の未納期間も長く、年金をもらうには危うい状態です。しかし、結婚後、第3号被保険者となったので、A子さんはこれで安心だと思いました。
ところがしばらくして、夫が65歳になり数か月経過した頃、A子さんの元へ、国民年金の納付書が届きました。 そういえばこれまでいろいろな書類が届いていたけれど、過去の国民年金の保険料のことかと思い、よくわからずそのままにしていました。 そのとき、保険料の納付書が届いたのです。
A子さんは思いました。「私はサラリーマンの妻でしょ。健康保険証だって持っているし、こんなことってあるのかしら…」
A子さんは年金事務所が間違っているのではないかと電話をしました。 しかし、第2号でない人の妻は第3号になれないと言われ、意味がわかりません。とにかく保険料を納めるように言われました。
困ったA子さんは、ふと思いだして、FPとして仕事をしている友人にたずねてみました。 すると、友人はこんな説明してくれました。
国民年金に加入する人たちを第1号から第3号の3つのグループに分けている。 第2号被保険者は会社などで厚生年金に加入している人。厚生年金に加入しているけれど、同時に国民年金にも加入していて、国民年金の第2号被保険者という。
第2号被保険者は原則65歳までとなっていて、65歳以降も会社に在籍していれば厚生年金に加入するけれど、国民年金には加入しなくなる。
第3号被保険者は第2号被保険者の配偶者。 夫が65歳になって第2号でなくなれば、妻は第3号ではなくなり、第1号として保険料を納付する
A子さんはだんだんわかってきました。
「夫のように65歳以降も働いている人は、65歳までは国民年金と厚生年金に加入しているけれど、国民年金は65歳までで終わってしまい、夫が国民年金からはずれると、妻は第3号被保険者になれず、自分で保険料を納めることになる」と理解しました。
A子さんは複雑だなと思います。 迷路に入り込んだみたい。結果が読めないミステリーみたい。
妻であることにはかわりがないし、夫が厚生年金に加入していることにもかわりがないし、保険料もかわらないのに、夫の年齢が65歳になると、妻は第3号になれないのですね。
今後もずっと第3号被保険者として年金制度に加入できると思っていたA子さんは間違いでした。年の差婚では、長い期間、夫の年金に加給年金(65歳未満の妻を対象とした年金の配偶者手当に該当するもの)がつくのはメリットですが、妻が国民年金の保険料を支払うようになると、差し引きした「手取り」は少なくなります。
もちろん、みんなが支え合っていく制度ですからメリットばかりではありません。 A子さんのミステリーは解決しましたが、もう少しわかりやすい制度であってほしいですね。
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