給料ダウン!でも、もらえない年金【2014年 第9回】

2014年 第9回 給料ダウン! でも、もらえない年金 年金ミステリー

菅野 美和子(スガノ ミワコ)プロフィール

長い間働いてきたA子さんは60歳で定年退職し、再就職の道を選びました。給料は大幅にダウンしましたが、年金がカバーしてくれるものと思っていました。年金の手続きをすませた後、振込のお知らせが届きましたが、なんと、支給額は月額数千円です。1桁間違いかと思い問い合わせましたが、正しい額であると言われました。A子さんは納得できません。全額に近い年金が支給されると計算していたのですが・・・

 

60歳以降、厚生年金保険に加入し働き続ける人は、在職老齢年金の仕組みにより年金が減額されることがあります。

多くの人は、年金だけは暮らしていけないと、60歳以降も働き続けます。しかし、現在の年金制度では、「働いているのであれば年金は全額必要ない」と、給料等に応じて年金額を減額します。年金の一部が減額になることもありますし、全額が支給停止になることもあります。

年金だけでは暮らしていけないから働くのに、働くことで年金が減額され、割り切れない思いを持つ人も多いものです。

A子さんは大規模な病院で看護師として働いてきました。病棟勤務でしたので夜勤があり、不規則な勤務でした。給料は同世代の女性より高い水準でしたが、A子さんは定年を前にして、体力的に仕事がつらくなってきました。

看護師としての仕事は続けたいけれど、夜勤がなく、身体に負担のない職場に移りたいと思っていました。ちょうどそのとき、デイサービスの看護職を紹介され、A子さんは定年退職後、小規模なデイサービスで働くことになりました。

給料は半分以下になりました。しかし女性の場合は、60歳から老齢厚生年金を受け取れるので、給料が下がった分は、一定額を年金でカバーできると考えました。

給料と年金額を合算して28万円を超えなければ年金は全額支給と聞いたので、約20万円の給料で働くことに決めました。年金は少しだけカットされますが、大部分は受け取れる計算でした。

A子さんの60歳からの年金額は月額約9万円です。

ところが、支給額は数千円。計算も間違っていないと説明されました。いったいどうなっているのでしょうか。話が違うとA子さんはあわててしまいました。

厚生年金に加入しながら働き続ける場合の年金は、年金月額と給料だけではなく、年金支給月から1年前までに支給されたボーナスの12等分を加えて計算します。また、「給料」とは、実際に支給された給料ではなく、標準報酬月額という等級に当てはめます。年金月額+標準報酬月額+1年間の賞与の12分の1を合計したものが、28万円を超えると、計算式に従って年金が減額されます。

A子さんは、受け取る年金額の計算に、ボーナス分を入れていませんでした。でも、A子さんは定年で会社を辞めました。辞めた会社でもらったボーナスもその後の年金に影響するのでしょうか。

再就職した会社で厚生年金に加入すれば、以前に支給されたボーナスも年金額に影響を与えるのです。

A子さんは夏冬にボーナスを受け取り、退職前にはちょうど期末手当も受け取りました。

退職前のボーナスは、住宅のリフォーム等で使ってしまったので、手元には残っていませんが、それでも支給されたボーナスは年金額に影響します。

再就職した勤め先ではボーナスなしの契約です。前の職場で最後に受け取ったボーナスから1年が経過すると、年金額へ影響はなくなります。そこではじめて、A子さんが最初に試算した年金額を受け取れることになります。

「給料ダウン、でも、もらえない年金」にはこのように理由はあるのですが、わかりにくいですね。本当に年金額はミステリーです。年金額の通知に「謎解き」が書いてあるといいのですが・・・

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