2014年 第2回 企業年金の「ほったらかし者」の人数は200万人近くもいる?- 最新ニュース解説。FPとして言わせていただくと…
菱田 雅生(ヒシダ マサオ)⇒プロフィール
平成25年3月末現在で、厚生年金基金の未請求者は14万人近く、企業年金連合会における未請求者は133万人、さらに、確定拠出年金の自動移換者が37万人。このような年金の請求をしていない人、または、何の手続きもしていない人、つまり、ほったらかし状態の人(=ほったらかし者)は、驚くほど多く存在しています。企業年金などの基本的な仕組みを理解しつつ、「ほったらかし者」にならないように自ら問い合わせたり、手続きをしたりするスタンスが大切です。
企業年金のひとつである厚生年金基金の未請求者(受け取る権利があるのに請求していない人)の数
なんと、企業年金のひとつである厚生年金基金の未請求者(受け取る権利があるのに請求していない人)の数が、平成25年3月末現在で、受給権者の約4%にあたる14万人近くもいるそうです。さらに、解散した厚生年金基金などの年金業務を引き継いでいる企業年金連合会においては、受給権者の約16%である133万人もの未請求者がいるそうです。合計して150万人近い人が、受け取れるはずの企業年金を受け取らずにほったらかしにしてしまっているのです。(厚生労働省HP「厚生年金基金等の未請求者の状況について」より)
また、確定拠出年金(DC)においても、離職や転職時に何の手続きもせずに6ヵ月以上放置してしまったことによって残高が国民年金基金連合会に自動移換され、現金化したうえで毎月手数料が取られる状態になってしまっている人が、平成25年3月末現在で、約37万人もいるようです。この自動移換者数は、ここ数年、毎年5、6万人ペースで増加していますので、平成26年3月末には40万人超になっていることでしょう。したがって、企業年金も含めた「ほったらかし者」の人数は、合計すると200万人近くに達していることがわかります。(国民年金基金連合会「個人型確定拠出年金」HPより)
このような現状の最も大きな要因は、働いている会社員などが自分の加入している企業年金等をよく理解していないところにあるのではないでしょうか。企業年金等は、すべての企業が導入しているわけではありません。導入している企業は、それだけ従業員のことを考えてくれている会社であるともいえます。にもかかわらず、従業員のほうがそれを理解せずにせっかくの制度を利用しないのは非常にもったいないでしょう。これを機会に、会社員の方は、自分が企業年金等に加入しているのかどうか、加入しているのであれば、どんな制度に加入しているのかを、いま一度、確認してみましょう。
そもそも企業年金は、確定給付型と確定拠出型に大きく分けることができます
確定給付型は、古くからある厚生年金基金や、確定給付企業年金などがあり、確定拠出型は、確定拠出年金(DC)があります。
確定給付型は、簡単に言えば給付額が確定している制度ですが、細かくはさまざまなタイプがあり、元本部分は減らないものの、毎年の利息額が世の中の金利水準によって変動するものや、最低保証金利と上限金利の間で毎年の利息が決まってくるものなどがあります。基本的には、企業または基金が積立と運用を行い、従業員は何もしないので、加入しているかどうかを忘れがちなのは、確定給付型の制度のほうだといえるでしょう。
一方、確定拠出型は、掛金は企業負担となっているケースが多いですが、商品の選択や運用は加入者である従業員本人が行わなければならないので、加入していることを忘れる確率は多少なりとも低いかと思われます。
なお、企業年金は、導入している企業によって制度内容が大きく異なる場合があります。現在、企業年金に加入している人は、自分の会社の制度がどのようになっているのかを細かな取り扱いも含めてきちんと確認しておくべきでしょう。
また、過去、転職などをしたことがある人で、前に勤めていた会社などで企業年金があったのかどうかを覚えていない人は、前の会社に問い合わせたり、企業年金連合会などに問い合わせたりすることで、将来、もらい忘れることのないようにしましょう。公的年金もそうですが、企業年金についても、受け取れる権利のある人が、裁定請求をすることによって年金が振り込まれるようになるのが原則です。知らずに損をすることのないようにしましょう。
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