2014年第7回 元気なうちにできる「老い支度」あれこれを知っておこう パート1 「任意後見契約と財産管理等委任契約と継続的見守り契約」の実務 前半- 相続の実際の現場からレポ
竹原 庸起子(タケハラ ユキコ)⇒プロフィール
相続専門のファイナンシャルプランナー・行政書士の中野庸起子です。今回から4回にわたり、生前できる「老い支度」である複数の生前契約と祭祀財産の整理や準備について、実際の現場での実情からお伝えします。一人暮らしや身内の少ない高齢者が、今は元気だけれどももし判断能力が衰えてきたら自分の生活はどうなるのだろうかと心配な場合に備えて、財産を渡す相手を指定する遺言書を残しておくこと以外にも知っておきたい老い支度があります。
今回はそのうち3つの契約を組み合わせて備えておくケースについて実例に即してお伝えします。
はじめに
まずはじめに、今は元気だけれども、自分の判断能力が衰えた場合に自分の生活がどうなるのか心配な一人暮らしの高齢者A子さんが、信頼を寄せるB子さんに何らかのサポートをお願いしたいと考えている場合に、A子さんがB子さんにサポートを依頼して書面などであらかじめ準備できることを、時系列で表してみました。
そのうち下記に記した4つの契約とお墓の準備について、4回にわたり解説します。
継続的見守り契約
任意後見契約
財産管理等委任契約 or 任意代理契約
死後事務委任契約
お墓の準備
これらのうち、必要なものをチョイスしてA子さんが元気なうちに準備しておくことが、これから安心して楽しく暮らせるための老い支度なのです。
今回は、このうち任意後見契約・継続的見守り契約・財産管理等委任契約という3つの生前契約を、A子さんがB子さんにサポートしてもらうという前提で、「任意後見契約」の手続き面を中心に見ていきます。
「任意後見契約」とは?
任意後見契約とは、将来、A子さんが判断能力が低下したときに、B子さん(任意後見受任者)が「任意後見人」となるということを、公正証書で残しておく契約のことを言います。
この契約はA子さんが判断能力のあるうちにします。B子さんが正式に任意後見人になるのは、A子さんが判断能力が低下した時に、家庭裁判所に任意後見監督人の申立てをし、任意後見監督人選任後となります。
任意後見人B子さんができる範囲は、「財産管理」「身上監護(介護や生活面での手配)」などの法律行為がほとんどです。B子さんはA子さんの療養看護やお見舞い、家事全般はできないことに注意が必要です。
A子さんは、任意後見契約時にB子さんにしてもらいたい法律行為を契約書に記すことになります。
任意後見契約は、「老い支度」「老後の安心設計」とも称されます(日本公証人連合会HPより)。任意後見受任者は一人でも複数人でもよく、夫 妻 子ども 親戚 専門家(弁護士 司法書士 行政書士など)が受任者となっています。
任意後見について実務についてまとめると下記の通りです。
実務上、認識違いをされている人が多く、特によく注意しておきたい点は下記の通りです。
◎A子さんが元気なうちしかこの契約を結べないということ。 B子さんは任意後見人となる予定の人ですから、もちろん法律行為ができる状態の人でなければなりません。元気=病気していても判断能力があればOKですが、認知症などになったらもはや任意後見の手続き自体ができないということにも注意が必要です。
◎あくまでAの「判断能力が低下したとき」に発動するものだとうことです。 判断能力が低下した時点からB子さんがA子さんの任意後見人として役目ができるのであって、それまでの間 つまりまだA子さんに判断能力があって法律行為ができる間は、後述の「財産管理等委任契約」や「任意代理契約」などで法律的な行為をしてくれる人を定めておかなければ、結局なにも生活の変化はないということです。
◎実務上よく使われているのは単独での 任意後見契約のみ よりも 移行型の任意後見契約です。 これは 生前の財産管理等委任契約など+任意後見契約 のミックス型(判断能力があるうちは、事務や見守り等を委任する契約をし、A子さんの生活を支えます。普段からA子さんの見守りをしているため、判断能力が低下してきたらB子さんが「任意後見人」へとスムーズな移行ができることから 移行型といいます)です。(財産管理等委任契約については後半のコラムで述べます)
任意後見契約は あんしんを得られる「保険」 のようなものなのですね。
後半は、財産等管理委任契約と見守り契約についてお伝えします。お楽しみに。
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