元気なうちにできる「老い支度」あれこれを知っておこう パート3 「死後事務委任契約」【2014年 第9回】

2014年 第9回 元気なうちにできる「老い支度」あれこれを知っておこう パート3 「死後事務委任契約」- 相続の実際の現場からレポ

竹原 庸起子⇒プロフィール

相続専門のファイナンシャルプランナー・行政書士の中野庸起子です。第7回、第8回のコラムでは、「任意後見契約」「財産管理等委任契約」「継続的見守り契約」をすべて同時におこなう老い支度について説明しました。今回はA子さんとB子さんとの間で後日に追加で公正証書で締結された「死後事務委任契約」についてご説明します。

 

 

はじめに

前回の3つの契約で、A子さんのお金に関する不安はほとんど取り除かれて安心でした。

しかしながらその後とある問題が生じました。

それは、A子さんの死亡と同時に「任意後見契約」「財産管理等委任契約」「継続的見守り契約」は3つとも終了するということです。

A子さんの死亡と同時にB子さんには何の権限もなくなり、預かっていたA子さんの財産はすぐに遺言執行者(A子さんが遺言書で生前に指定していた場合)もしくはA子さんの法定相続人へすみやかに引き渡さなければならず、死後の納骨や法事に関する諸手続き、死後直後の精算事務などはB子さんにはできないということになってしまうのです。

A子さんは疎遠となっている親族よりも信頼できるB子さんにそれらの諸手続きしてもらいたいことから、「死後事務委任契約」を公正証書で締結したのです。

死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、自分の死後の葬儀・納骨・債務弁済・家財道具の処分などの事務を生前のうちに他人へ依頼する契約のことを言います。

A子さんがB子さんに委託した「財産管理等委任契約」は、A子さんが死んだら同時に契約が終了してしまい、A子さんが死んだと同時にB子さんが預かっているA子さんの財産から葬儀費用の支払いなどの最低限の事務作業がB子さんではできません。

それでは不都合が生じるため、あらかじめA子さんが死んだら、死後の手続きをB子さんができるようにしておくものです。

判断能力があるうちでないとできない契約です。

私文書でも公正証書でもOKですが、財産管理等委任契約と同時に、もしくは公正証書遺言書と同時に締結しておくといいでしょう。

もし、B子さんが公正証書遺言書で遺言執行者(以前の私のコラムを参照ください)に指定されていて、同時に死後事務委任契約の受任者となっていれば、A子さん死亡と同時にB子さんが遺言執行者としてA子さんの相続財産を預かり、かつその財産の中から死後の事務に必要な支払いができる上、遺言執行がスムーズに行えます。

死後事務委任契約で指定できる「死後の事務」とは

では、死後事務委任契約で委任できる「死後の事務」とはどのようなものでしょうか。

次に死後事務委任契約書公正証書のひながたを掲載します。

 第3条では、A子さんが死亡してから役所への手続きから葬儀費用や永代供養料の支払いまで依頼できることになっています。

第4条、第5条では、通夜告別式をおこなうお寺、納骨をしてほしいお寺まで指定できます。

もし契約締結時点でお寺が決まっていなければ指定しなくてもいいのですが、B子さんの事務をスムーズに行うため、A子さんの生前の意向に沿うためには指定しておいたほうがいいでしょう。

死後事務委任契約は、このように身寄りのない高齢者や身寄りはあるけれどもなんらかの事情で死後の事務をその身寄りに依頼できない場合に、適する契約です。

この契約を上手に使うことで、幸せな老い支度、終活ができますね。

A子さんは上記のような死後事務委任契約書を残すことで自分の死後のお骨の行方や法要についても安心できそうです。

でも、ちょっと待ってください。第4条5条に書いてあるような納骨や埋葬のこと。先方のお寺は承諾しているかどうかを確認しなければなりませんよね。

次回は、この死後事務委任契約書締結と同時にしておかなければならない「お墓」つまり「祭祀財産の承継」の問題について、A子さんはどのような準備が必要だったかをお話します。

お墓の準備と死後事務委任契約を完璧にできれば、A子さんは残りの人生を謳歌できる環境が整いますね。

A子さんの完璧な「終活」「老い支度」まであと一息です。次回をお楽しみに。

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