【2012年 第8回】 死亡保障が必要なのは夫・妻・子?
ライフプラン別コラム – 子育て世代の生命保険入門
平野 雅章(ヒラノ マサアキ)⇒プロフィール
子育て世代の生命保険相談をしていると、家族全員がかなり高額な死亡保障の保険に加入しているご家族もいらっしゃいますが、家族全員に死亡保障が必要なケースはむしろ少ないものです。家族一人一人の必要な死亡保障額をしっかり考え、無駄なく保障を確保したいものですね。今回は夫・妻・子、それぞれの死亡保障の必要性を考えます。
死亡保障の必要額は遺族の家計の不足分に過ぎない
その人が亡くなったことで、今まで得ていた収入が途絶える、あるいは多額の支出が発生することにより遺族の家計が厳しくなるかどうか、これが死亡保障の必要性を判断する基準です。
また、適切な死亡保障額を決めるには「必要保障額」という考え方があります。必要保障額とは、家族の一人、通常は家計を支えている人が亡くなったと想定して、遺族の今後の支出(生活費や教育費など)と遺族の収入(給与や遺族年金など)を見積もり、その支出額から収入額を差し引いた金額です。
つまり、死亡保障の必要額は、その人の生命の重さや価値を表すものなどではなく、遺族の家計の不足分に過ぎません。何となく、ある程度の金額が欲しいといった心情的なものは、一度取り外して考えてみるとよいでしょう。
夫の死亡保障の必要性は?
次のプロフィールの家族について、夫の死亡保障の必要性を考えてみます。
・夫 32歳の会社員。平成15年4月入社で平均標準報酬額が35万円。
・妻 30歳の専業主婦。以前はパートで厚生年金加入期間はない。
・子 1歳の長女。
現在の基本生活費は20万円、家賃は9万円。夫が亡くなった場合、妻はパートを始め65歳まで年収100万円と想定します。子の教育に関しては大学が私立文系で他は全て公立とします。なお、平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の厚生年金加入期間中の給与とボーナスを所定のルールで合計し、加入月数で割った金額です。
このケースでは、夫が亡くなったことにより、遺族年金が子の18歳の年度末まで約147万円*、その後は妻が65歳になるまで約105万円*、その後は妻の老齢基礎年金と合わせ約124万円*が妻の生涯に渡り支払われます。しかしながら、妻のパート収入100万円と合わせても多額の蓄えがない限り、遺族の家計は厳しいものとなります。現在の貯蓄額を300万円とすると必要保障額は、3,789万円*と算出され、まとまった金額の死亡保障が必要と考えられます。(このケースの必要保障額の計算については、第3回の記事で詳しく説明しています。)
このケースでは、夫の給与への依存度が高く、貯蓄額もそれほど多くないため、このような結果になりましたが、一方、妻が手取り年収で200数十万円を65歳まで得ることができれば、必要保障額は0と算出されます。共稼ぎで妻が長期に渡って働くことが見込めるのであれば、夫の死亡保障は不要なことも多いのです。
*遺族年金・老齢年金は全て平成23年度価額で算出。
妻の死亡保障の必要性は?
妻が現在収入を得ておらず、将来的にも収入を得ないで家計の問題がなければ、妻の死亡保障は不要であると考えられます。ただし、子が幼く預けるのに新たな支出が発生する、あるいはホームヘルパーを頼むことや外食が増えることにより生活費がかさむことが考えられ、家計が厳しくなることがあります。そのような支出の増加と葬儀費用に貯蓄で対応できないのであれば、その分を見積もり、妻の死亡保障を確保する必要があります。
共稼ぎの場合、あるいは妻のみが収入を得ている場合は、夫と同様に必要保障額を算出して死亡保障の必要性と必要額を判断することになりますが、注意したい点があります。妻が亡くなっても、夫は所定の場合を除き遺族年金を受け取ることができず、18歳の年度末まで子に遺族厚生年金(報酬比例部分)のみが支給されることになります。夫が亡くなった場合に比べ、妻が亡くなった場合では遺族が受け取れる遺族年金の額は非常に少なくなるため、共稼ぎでも妻にだけ死亡保障が必要というケースもあるのです。しっかり必要保障額を算出して判断することが重要です。
子の死亡保障の必要性は?
子が亡くなった場合、収入が減少する、あるいは多額の支出が発生することは通常ないでしょう。葬儀費用に貯蓄で対応できない場合を除いては、死亡保障の必要性はないと考えられます。子どもを対象として販売されている保険や共済では死亡保障が含まれていることも多いのですが、子の保険を考える時には、子ども向けにこだわらず、必要な保障内容のみの単品の保険と比較・検討した方がよいでしょう。
今回の記事では、子育て世代の家族では死亡保障が誰に必要なのかを考えてみました。次回の記事では、死亡保障を見直すべき時期やイベントについて考えてみたいと思います。
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