岡本英夫のFPウオッチャーだより 第1回 FPのコンセプト「販売方法の3段階発展説」 【2022年4月】

マイアドバイザー® 顧問 岡本英夫 (オカモト ヒデオ)さん による月1回の連載コラムです。
ファイナンシャル・アドバイザー(近代セールス社;2022年春号以降休刊)の初代編集長として、同誌でも寄稿されていたエッセイの続編的な意味合いのあるコラムとなります

岡本英夫プロフィール

FPのコンセプト「販売方法の3段階発展説」

米国にファイナンシャル・プランナーなる職業があることを知ったのは1983年のことだった。
ネット検索もない時代、FPをキーワードに取材を続けているうち、雑誌『投資信託事情』82年2月号に「米国のフィナンシャル・プランニング」(霜浦正敏・国際証券新宿営業本部次長)という記事が掲載されていることを知った。

読んでみるとFPのコンセプトを的確に表現した素晴らしい記事内容だった。
なかでも「販売方法の3段階発展説」には説得力があった。ところが後年のFPテキストにはこの部分をとりあげたものが見当たらないように思う。
そこで、拙著「ファイナンシャルプランナーの時代」(近代セールス社、現在は絶版)からこの部分を紹介してみたい。

なお、以下はICI(アメリカ投資会社協会)の1976年年次総会でファイナンシャル・プランナーズ協会のC・ピーターソン会長が行ったスピーチの一部である。

第一世代の販売方法(ヘンリー・フォードの時代)

有名なT型フォードに代表される売り手市場の時代、つまりつくりさえすればいくらでも売れた時代である。
ベルトコンベアー方式による効率的な生産で、ものの「製造」の歴史では一大エポックを画した輝かしい時代であった。
だが、しかし「販売」方法の歴史としては極めて幼稚で原始的なものであった。
「お客様の欲しいとおっしゃる色の車ならどんな色でもお売りします。ただし、その色は黒に限ります」というのは有名なヘンリー・フォード一世の言葉であるが、消費者のニーズを全く無視した乱暴な考え方である。
しかし、それが罷り通った時代であった。
問題は今、それと似たことをわれわれ自身が依然としてやってはいないかということである。

第二世代の販売方法(IBMの時代)

第一世代の販売方法に比べれば格段に優れたものになった。
IBMに代表される時代である。
セールスマンの商品知識も豊富で商品説明は高度に訓練されている。
しかし、その販売方法たるやまだ問題なのである。
何故ならば会社の売りたい特定の商品だけを、相手のニーズに関係なく押し付けるゴリ押し商法だからである。

第三世代の販売方法(フィナンシャル・プランニングの時代)

フィナンシャル・プランニングこそこれからの、いわゆる第三世代の販売方法である。
そして、それは前世代の販売方法に対する大きな反省の上に生まれた。
つまり、前世代の商品志向(product-oriented)の販売方法ではなく、問題志向(problem-oriented)の販売方法でなくてはならない。
単なる商品販売ビジネス(product business)ではなく、顧客の抱えている問題を顧客の立場に立って解決する問題解決ビジネス(problem-solution business)でなければならないとする哲学に裏打ちされたものである。
資産運用が一個人の手に負えなくなったのは前述のとおりである。
しかし、さりとて1人や2人の専門家に相談しても資産・家計全般にわたる対策は不可能である。
何故ならば、株式・債券・投信・銀行・保険・不動産業等のセールスマンに相談しても、彼らは自己の分野の知識しかなく、そのうえ悪いことには顧客の資産を全部自己の商品で充たしてしまうという強い傾向を本来的に持っているからである。
これでは個人の資産運用はとうていおぼつかない。
どうしてもまず顧客の立場に立ち、個々の顧客に固有のニーズに適合したプランを練り上げて提言することが必要になる。
商品の販売はその結果である。このような手法を取る独立のプランナーの出現を人々が求めたのである。

全文を紹介したいところだが、以上でFPのコンセプトは伝わるはずだ。
このコンセプトが1980年代、金融商品を販売する銀行・証券・保険会社等でのFP導入の後ろ盾となったのである。
40年前の記事だが、今読み返しても古くはないと思う。

なお、ここではファイナンシャル・プランニングではなくフィナンシャル・プランニングとなっている。
「ファイ」か「フィ」もこのころは議論になったが、現在は「ファイ」で統一されている。

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