年始【2012年 第1回】

【2012年 第1回】年始    2012年の景気は海外頼み、個人はさらなる生活防衛の年か

浅川 陽子(アサカワ ヨウコ)⇒プロフィール

2012年の景気は海外頼み、個人はさらなる生活防衛の年か

神奈川県内のシンクタンク調査によれば、2011年の神奈川県民の冬のボーナスは、民間企業で1人当たり、平均49万9,000円で前年比0.2%マイナス、2年ぶりに前年を下回りました。東日本大震災の影響等で2011年上期の企業収益が悪化したためとみられています。

 

 

 

冬のボーナスの使い道は、電通総研の調査によれば、1位が「貯蓄」、2位が「ローンや借金の返済」、3位は「日頃の生活費の穴埋め」となり、夏のボーナスで1位だった「国内旅行」は4位に下がり、欧州問題や円高継続に対する不安感で、慎重な姿勢をみせているという分析でした。

一方、消費の方は、10月の神奈川県内の百貨店売上は2ヶ月ぶりに前年比プラスでしたが11月にはまたマイナスに転じました。気温高で冬物衣料の売上不振が要因とのことですが、食料品ではおせちの予約が順調に伸びたといいます。この冬の商戦のキーワードは、「防寒」。年末に近づき、本格的な寒さを迎え、節電意識もあり、暖房に頼らない防寒対策に関心が高まって、衣類以外でも防寒対策グッズの売れ行きが伸びているようです。

2011年は、なんといっても東日本大震災の影響をぬきにしては語れない年になりました。「絆」を大切に家族団らんで迎える新年、2012年はどんな年になるのでしょうか?

<2012年の経済見通し>

12月22日、政府の2012年の経済見通しが閣議了解され、物価変動の影響を除いた国内総生産(GDP)の成長率は2.2%増との予測になりました。GDP成長率の寄与度として、エコカー補助金の復活で自動車購入が増え個人消費を下支えし、住宅版エコポイントの再開や被災者の生活再建で、住宅投資の高い伸びを見込んでいるといいます。また、世界経済の落ち着きとともに、輸出も減速から増加に転じるという予想で6.5%増となっています。

 

 

 

 

 

2012年の成長率2.2%は、民間の多くのシンクタンクの予想値が2%以下なのに比べて、楽観的ともいわれています。特に、輸出部門は世界経済の回復期待が前提にあり、回復の遅れや円高で輸出が落ち込む懸念もありそうです。
2011年12月には、北朝鮮の金正日総書記死去が報道され、新体制移行で今後のアジア情勢における不安材料が増えました。さらに2012年は中国を始めとする、政権交代が世界中で予定されており、経済だけでなく政治の面でも先が不透明だといわれています。海外頼みともいえる2012年の日本経済、回復期待
もかなり下振れする可能性は高いかもしれません。

<リスクに備える意識・エコ意識高まる>

2011年は、東日本大震災の影響で被災地以外の地域でも、リスクに対する関心が高まった年であったといえるでしょう。阪神大震災の時もそうだったように、今回の東日本大震災以降、地震保険加入者はかなり増加しました。地震保険以外にも生命保険、がん保険への関心も高まっているといいます。特に子どもをがん保険に加入させたいという問い合わせも増加しているそうです。

住宅では耐震建築は当然ながら、停電に備えての自家用発電設備の普及も伸びているといいます。最近では、屋上に太陽光パネルを敷いて自家発電の設備を備えた分譲マンションも登場し、価格がその分割高であっても人気は上々だそうです。神奈川県内でも、4月には太陽光パネル付き分譲マンションが完成予定で、その後も建設予定が続いています。

東日本大震災の次には関東や東海地方での大地震も心配される中、リスクに備える意識・エコ意識の高まりは、2012年も続くものと思われます。

<先が見えない2112年は生活防衛の年>

2011年の前半は、アナログ放送の終了に伴う薄型テレビの売上やエコポイントが寄与したエコカーの売上が伸びましたが、後半は消費の勢いも落ちました。2012年には、震災復興や景気刺激策としてエコカー補助金や住宅版エコポイントの再開や、「フラット35Sエコ」の新設で新たな金利引き下げも予定
されていて、それなりに個人消費は伸びるものと思われます。

しかし、一方で、世界経済の行方に明るさが見えないと、収入が増えないまま増税、さらに将来の増税負担で、家計にとっては厳しい年になりかねず、生活防衛の意識が働く年になるかもしれません。
ここ数年、家計簿の売れ行きが伸びており、PCの家計簿ソフトも人気です。家計簿をつけている人はつけていない人より貯蓄が多いという調査結果もでています。家計簿をつけ始めると、「こんなものにこんなに使って・・・」という反省心が芽生え、無駄遣いが減ります。1年間つけるのが大変だという人も、数ヶ月ぐらい付けてみるとかなり自分の家の消費パターンが把握できるそうです。

最近、「物を片付けてすっきり暮らす」「物をあまり持たずシンプルに暮らす」というのがかなりトレンドになってきましたが、結局、家の中も、家計も無駄をなくすことが賢い生活防衛策になるといえるのかもしれません。

 

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