【2012年 第2回】 生命保険料控除の改正
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久保 逸郎 (クボ イツロウ)⇒ プロフィール
平成22年の税制改正にともなって、平成24年1月1日より生命保険料控除の仕組みが改正されました。そのため平成24年1月1日以降新たに締結した生命保険契約等については、税制改正後の生命保険料控除が適用されることになります。
■制度改正の概要
<1>介護医療保険料控除の新設
医療保障・介護保障ニーズが年々高まっている状況を踏まえたものと思いますが、新たに「介護医療保険料控除」が設けられました。
そのため平成24年1月1日以後に契約締結した生命保険のうち、法令に定める「介護医療保険契約等」の対象となる契約に係る保険料等については、適用限度額を所得税4万円・個人住民税2.8万円とする新たな介護医療保険料控除の対象になります。
<2>一般の生命保険料控除及び個人年金保険料控除の適用限度額の変更
平成24年1月1日以後に契約締結した生命保険契約等について、一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除の対象となる契約に係る保険料の適用限度額は、それぞれ所得税4万円・個人住民税2.8万円に変更されます。
<3>控除制度全体の適用限度額の変更
平成24年1月1日以後に契約締結した生命保険契約等について、一般生命保険料控除・個人年金保険料控除及び介護医療保険料控除を合わせた全体の適用限度額は、所得税の場合は12万円に変更されます。
旧制度では10万円が全体の適用限度額であったため、所得税全体では控除枠の拡大ということになります。今後、少子高齢化の急速な進展により社会保障負担の増大・給付の見直しが見込まれる中、国として私的保障充実のための自助努力支援を行う必要があることが背景にとして考えられます。
但し、個人住民税は限度額7万円のまま変更はありません。
<4>適用枠の判定
主契約と特約の保険料について、それぞれの保障内容を判定して、各保険料控除額が適用されます。
<5>生命保険料控除の対象外となる特約等の取り扱いについて
平成24年1月1日以後に契約締結した生命保険契約等のうち、身体の傷害のみに基因して保険金が支払われる特約等に係る保険料は、生命保険料控除の対象外になります。
■適用制度・所得控除限度額
①新たな生命保険料控除制度の適用対象
平成24年1月1日以後に契約締結した生命保険契約等に係る生命保険料控除については、新制度の適用となります。また、平成23年12月31日以前に契約締結された生命保険契約等についても、平成24年1月1日以後に更新等が行われた場合には、その更新等の日以後の保険料は新制度の適用となります。
②従来からの生命保険料控除制度の適用対象
平成23年12月31日以前に契約締結した生命保険契約等に係る控除については、平成24年1月1日以降も従来の制度(旧制度)が適用されます。
③各制度における適用控除限度額
■保険料控除額の計算方法
■留意事項
<1>新旧両方の適用対象契約を契約中の場合
新旧両方の適用対象契約を契約中の場合で、新旧両制度適用分の生命保険料控除を適用・申告される場合は、両制度の合計額が申告額になります。
その場合の控除限度額は所得税12万円・個人住民税7万円になります。
また、新旧両制度を適用する場合、旧制度の一般生命保険の保険料と、新制度の一般生命保険の保険料に係る控除は、合計で所得税4万円・個人住民税2.8万円が上限となります。
これは旧制度の個人年金保険料等の保険料と新制度の個人年金保険等の保険料に係る控除についても同様の扱いになります。
<2>各生命保険料控除の分類判定
新制度には「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つの控除枠があり、ご契約中の生命保険会社等が各保険料の控除枠を判定します。
「一般生命保険料」→生存又は死亡に起因して一定額の保険金・その他給付金を支払うことを約する部分に係る保険料など「介護医療保険料」→入院・通院等にともなう給付部分に係る保険料など
「個人年金保険料」→個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険契約等に係る保険料
<3>配当金の取扱について
配当金(相当額)は、本契約に割り当てられる配当金等を、「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」「その他保険料」の各保険料によって按分して、各々控除対象保険料から控除します。
■個人年金保険料控除の有効活用を
最後になりますが、とくに意識して有効活用していただきたいのが個人年金保険料控除です。今回の改正で平成24年1月1日以後に契約締結した場合の限度額が引き下げられましたが、それでも所得税で4万円・個人住民税で2.8万円の控除が利用可能です。
所得税・個人住民税ともに税率10%と仮定した場合、両方合わせて年間6800円の減税効果を得られることになります。
近年の個人年金保険は予定利率が低いため魅力に欠けるのは事実ですが、この減税効果を含めて考えれば、それほど条件は悪くないと思います。
せっかく国として老後に向けた資金形成を応援してくれる制度になっているわけですから、上手に活用しましょう。
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