中部地方の地方税収【2012年 第12回】

【2012年 第12回】 中部地方の地方税収 エリア別コラム – 地域:東海甲信越

松山 智彦(マツヤマ トモヒコ)⇒プロフィール

 

 

地域コラムの東海甲信越を担当します松山智彦です。最終回である今回は、静岡県を含む中部地方全体の一人あたりの地方税収について、平成17年と平成23年で比較をしてみたいと思います。

 

 

 

このシリーズ最終回の今回は、地方税収を平成17年と平成23年で比較し、そこから少々強引でありますが中部地方の経済動向をみて行きたいと思います。なお、平成17年と平成23年を採用した理由は特にありませんが、平成18年に実施された個人住民税において税源委譲を挟んでいる事も考慮していただければと思います。

○ 統計データより

都道府県別に見た人口1人当たりの税収額の指数
(平成23年、平成17年、出所:統計センター静岡から筆者が一部加工)

平成23年の国家予算は約94.7兆円、一方地方税の合計は35.4兆円で国家予算の40%を下回ります(因みに平成17年は約82兆円、地方税合計は34.8兆円)。これを一人当たりで見てみますと中部地方では愛知、静岡が全国平均を上回っています。しかし、平成17年と比べると新潟、長野、岐阜以外は下回っている結果になっています。全国トップである東京も10%近く下落しているので、仕方ないことかもしれませんが、それでも気がかりな数字です。

個人住民税を見てみますと、税源委譲の効果で税収は約50%増えています。一人当たりの数字も平成17年もすべての県で上回っています。特に新潟の伸びが顕著です。

地方法人税を見てみてみますと、税収が減っています。法人事業税の改正が平成20年にあったとはいえ、企業業績の悪化が主な原因と見ています。特に愛知、静岡の落ち込みが顕著です。製造業が多いこの2県は、円高や消費の落ち込み等の影響を受けていると言えるでしょう。裏を返せば、愛知、静岡の法人税が増えれば、景気は良くなったとも言えます。
参考までに、景気動向指数の対象になっている法人税収入は遅行系列に含まれています。つまり実際の景気状況に遅れて数値が表れます。

地方消費税を見てみますと税収的には少し落ち込んでいます。消費税の数値で景気の動向を消費の面として捉えてみますと、福井、静岡、愛知が平成17年より増加しています。法人の落ち込みを消費でカバーする・・・という所までは税額の側面などからいささか強引ですね。

固定資産税を見てみますと税収的には変化がありません。固定資産税は資産価値の変化として捕らえてみますと、福井、愛知、静岡の高さが目立ちます。都道府県別幸福度全国1位である福井の強さは保有する資産の多さ・・・というのも強引ですね。ただ、その保有資産の多さが消費を支えているというのは、この数値からは言えるかもしれません。

○ 中部地方の将来像

この統計は、全国の地方税の不均衡さを課題にするために作られたもので、平成17年と比較すると不均衡が少し改善されたように見えます。

今後、国の地方への権限委譲も検討されるとの事。税収面での地方格差が減少しても、環境面では地方格差が広がる事も予想されます。ただこれを「格差」ととるか「差別化」ととるかで大きく異なってきます。人の流動性が高い東海地方、伝統産業が数多くある北陸地方、農業や観光に強みのある信州地方、それぞれの強みを生かしていくことによって、活性化していく事が期待できます。
“地方の時代“は”個性の時代“とも言えます。

おまけ:平成24年度(第61回)静岡県統計グラフコンクール優秀作品

静岡県では小学生(1・2年、3・4年、5・6年の3つの部)と中学生を対象にした、統計グラフコンクールを行っています。平成24年で61回目を迎えましたが、優秀作品にはユニークなものがたくさんあります。
例えば、「見つめよう、親子の絆」、「宝物みつめたよ、自然の恵み、湧水」、「中学生からみた増税問題」、「トモダチの形」などはテーマとしても斬新で考えさせられるものがあります。

私たちファイナンシャルプランナーは、データやデータをグラフに加工して説明などに利用する事がありますが、そこから思わぬ発見や考えさせられる事が多々あります。
データの使い方、表現の仕方について、このコンクールを通じて学んでいき、ブラッシュアップしていきたいと思います。

最後にこの1年間、コラムを読んでいただきましてありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!

 

1年間、ご拝読いただきありがとうございました。2013年 第1回コラムをお楽しみに!
~ 事務局スタッフ一同より ~

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