『ニッセイの単品販売はうまくいくのか!?』【2012年 第5回】

【2012年 第5回】 『ニッセイの単品販売はうまくいくのか!?』
ケース別コラム – 最新の「保険」商品情報!

久保 逸郎 (クボ イツロウ)⇒ プロフィール

 

 

生命保険業界で最大手である日本生命が平成24年4月2日より、「みらいのカタチ」という名前の新商品を発売しました。この商品の最大の特徴は、これまでの「主契約に特約を付加する方式」ではなく、「ひとつひとつの保険を単品として提供する方式」への変更が最大の特徴です。ネットやマネー雑誌などで「日本社(いわゆる漢字生保)の商品は多数の特約が付加されていてわかりにくく、複雑で使い勝手が悪い」というような批評をされていることが多いため、対処せざるを得なくなってきた事情もあると推測されますが、長年にわたって「主契約に特約を付加する方式」の商品を主力として販売してきた日本生命においては大きな戦略変更と思われ、今後は同様の商品戦略をとっている他保険会社への影響が出てくる可能性も高いと思います。

■新商品「みらいのカタチ」の特徴

日本生命が3月23日に発表したニュースリリースでは、新商品「みらいのカタチ」の主なポイントとして、以下の3点を挙げています。

≪主なポイント≫
○“ご加入時”および“ご加入後”の自在性向上
⇒“ご加入時”は、必要な保険を自在に組み合わせることができ、様々なお客様にぴったりの保障をご提供できます。
⇒“ご加入後”は、お客様のライフステージやニーズの変化に合わせて自在に見直すことができ、その時々のお客様にぴったりの保障に変更できます。

○お客様にとってわかりやすく、シンプルな保障内容
⇒保障範囲を拡大することや、支払事由を公的制度と連動させること等を通じ、お客様にとってさらにわかりやすく、シンプルな保障内容としました。

○サービスの充実
⇒ニチイ学館との提携により、新しい介護サービス「ケア・ガイダンス・サービス」を導入するとともに、治療やセカンドオピニオンの取得に適した専門医を紹介する「ベストドクターズ・サービス」の対象範囲を拡大しました。

このようにシンプルでわかりやすい単品商品の組み合わせができるようになったことを全面的にアピールする内容になっています。家族構成や性別・世代などによって異なり、また、年々多様化しているニーズに対して、複雑な縛りを無くして対応しようとする同社の狙いがあると思います。

■課題は有期保障と更新型

しかし、課題に感じる部分もあります。一つ目は形式的には終身保険や介護保障保険、総合医療保険などの異なるはずの単品商品を、「みらいのカタチ」というように商品名をまとめてしまっていること。同社がホームページに出しているおすすめプランなどを見ても、これまでの「主契約に特約を付加する方式」の頃とあまり変わり映えしません。それぞれの保険ごとの保険料も掲載されていませんので、これでは契約者が具体的に見直し手続きをするまで単品化されたことのメリットを感じる機会がないのではないでしょうか。
本当の意味で単品化戦略をとるのであれば、それぞれの保険種類ごとにペットネームを付けて、保険料も公表するくらいまで行って欲しいものです。

もう一方の課題は、長寿化が進む中で終身保障へのニーズが高まってきている中、払込期間で保障が終了する有期保障の商品が中心になっていることと、相変わらず更新型が勧められている点です。死亡保障中心に考えていた時代には、更新型でその都度保障額を見直していく方法でも良かった面はあると思います。

しかし、近年は医療・ガン・介護などの分野に顧客ニーズがシフトしつつあります。この分野においては有期保障よりも、「終身の保障を得たい」「できれば更新のたびに保険料が上がるのではなく保険料が一定の商品」という希望が多いと思います。とくに若い世代には保障期間は終身を確保しつつも、保険料は現役のうちに払い終えたいという短期払のニーズも多いと思いますので、商品内容については改善の余地があるように感じます。

■単品化・シンプル化はすでに当たり前

もうすでに外資系・損保系・ネット系などの他生命保険会社においては、シンプルでわかりやすい単品商品を顧客がニーズに合わせて選ぶというスタイルが定着しています。これらの生命保険会社はローコストでのオペレーションを競って商品の価格競争力を保っており、規模の大きい大手漢字生保が商品の価格競争で対抗するのは難しい状況です。スケールメリットを活用してサービス面などの強化を図り、サービスの充実によって価格差の部分を埋めていくことが必要になると思います。

また、営業職員のコンサルティングスキルの向上も必要不可欠になります。とくに単品商品の組み合わせによって保障設計を行う場合には、他社と比較される場面も多くなりますので、営業職員の他社商品の知識がこれまで以上に必要になってくることでしょう。さらに家族構成や年齢・性別・生活環境などによって全く異なる顧客ニーズを、営業職員がそのライフステージごとに的確にとらえていくスキルも、これまでよりも高いレベルが求められると思います。

いずれにしても日本生命の今後の取り組みには注目したいところです。

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