【2015年 第4回 投資信託の基礎2 ~株式の配当金と分配金の違い~】インフレに備えて 基礎から学ぶ 投資信託
恩田 雅之(オンダ マサユキ)
2015年は、「投資を身近の感じてもらう」をテーマに主に投資信託の仕組みや用語の解説を中心に書き進めていきます。今回は、「株式の配当と分配金の違い」と「普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の違い」についてみていきます。
はじめに
企業は決算を行い、原則、当期の利益を配当金という形で株主に支払います。
投資信託も同じように決算を行い、当期の利益を中心に分配金として投資信託保有者に支払います。配当金、分配金とも決算を行い株主、投資信託保有者に支払う点は同じですが、株価と基準価額に与える影響は大きく異なります。
以下、配当金と分配金の違いを確認しながら、分配金についての理解を深めていきましょう。
株式の配当金について
一般的に企業は、稼いだ利益を、配当金、内部留保(研究開発や工場建設等企業が成長するために使われる資金)、役員報酬等に分割して処分します。
最近では利益の100%を配当に回す企業もあります。また、成長性を重視するために利益を内部留保に回り無配当の企業もあります。
ここでは、企業が稼いだ利益の一部を還元する方法が配当金という点を押さえておきましょう。
投資信託の分配金について
投資信託の場合は、「純資産総額」から分配金を支払います。
前回のコラムでみてきましたが、「純資産総額」は、その投資信託が保有している銘柄の投資額(価額×株数)やその期間に受取った配当金や利子等を合計して求めます。
ここでは、分配金が純資産総額から支払われる点を押さえておきましょう。
配当金と分配金の違いについて
株式の場合、増配(配当を増やす)を発表すると、その会社の株式を購入したい人が増え、株価が上昇しますと、株主は受け取る配当が増え、株価の上昇により含み益も得られることになります。
投資信託の場合は、分配金を保有者に支払うと、その分だけ基準価額が下がります。
投資信託の基準価額の変動が無いと仮定した場合、基準価額が10,000円の時点で500円の分配金を出しますと、基準価額は9,500円になります。投資信託の分配金についてでも触れましたように、分配金を支払うと「純資産総額-分配金」となり、確実に分配金の分だけ純資産総額は減ります。
また、「純資産総額÷総口数」で計算されます基準価額は分配金の分だけ下がります。
配当金は間接的に株価に影響を与えますが、分配金は直接的に基準価額を引き下げます。この点が、配当金と分配金の大きな違いになります。
普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の違い
同一の投資信託でも、購入した時期によって基準価額が異なります。ですから、購入時の個別元本(買付けた時点の基準価額)も違ってきます。
仮の個別元本が10,000円、分配金を払い出し前の基準価額が11,000円、分配金200円の時の分配金払い出し後の基準価額を計算しますと「10,800円=11,000-200円」になります。
分配金払い出し後の基準価額より個別元本が低いので(10,800円>10,000円)、この場合の分分配金は、普通分配金になり分配金200円に対して税金(20.315%)が掛かります。
次に、個別元本が10,000円で分配金を払い出し前の基準価額が9,500円、分配金200円とした場合の分配金払い出し後の基準価額は9,300円となります。
基準価額が個別元本より低くなります(9,300円>10,000円)。この場合、元本から分配金を払い出しているかたちになり、分配金を受け取った時点の個別元本は、9,800円(10,000-200円)になります。この時の分配金を以前は「特別分配金」と呼んでいましたが、投資家からみて解りにくいということで現在は「元本払戻金」と呼んでいます。元本払戻金については、税金は掛かりません。
上記の例では、個別元本10,000円のみで説明をしました。実際は、日々基準価額が変動する為、購入した時期により、個別元本は各投信保有者により異なります。
その為、同じ日の分配金でも、保有者によっては普通分配金になり、別の保有者では特別分配金(元本払戻金)となります。
まとめ
前回のコラムは、基準価額(純資産総額÷総口数×10,000)を株価との違いを説明させていただきました。今回のコラムでは、株式の配当金と分配金の違いを説明いたしました。
また、それ以外に「純資産総額」「総口数」という用語も出てきました。この4つの用語が投資信託を理解する上でのキーワードになります。
次回は、投資信託の運用スタイル「アクティブ運用」、「インデックス運用」を中心にみていきます。
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