おひとりさまの相続【2012年 第4回】

【2012年 第4回 おひとりさまの相続】女性のための幸せ相続を考える

マイアドバイザー®事務局 株式会社優益FPオフィス

増えつつあるおひとりさま世帯。年齢を重ねるにつれ、ふと、自分が突然死んでしまったらどうなるのだろう、という不安を感じるおひとりさまも少なくないのではないでしょうか。借りているマンションは?家財道具は?そしてコツコツ貯めてきた預貯金はどうなってしまうのでしょうか?

 ■   相続人を探してみると

おひとりさまと一口に言っても、その状況は様々で、子どもと離れてひとり暮らしをしている人もいれば、1人も相続人がいない本当のおひとりさま、親族はいるがほとんど付き合いがないというおひとりさまもいらっしゃると思います。親兄弟など、本来相続人となる人がいても、その全員が相続放棄をしたような場合にも、相続においてはおひとりさまとなります。

おひとりさまの相続を考えるとき、生前にしておきたいことの1つは、相続人がいるかいないかを戸籍をたどって確認しておくことです。

自分には相続人がいないものと思い込んでいたら、独身のまま他界した兄弟に、別れた内縁の女性との間に認知した子どもがいたとか、亡くなった父親がごく若い頃に離婚歴があり会ったこともない異母兄弟が現れた、などちょっと複雑なケースがないとも限らないからです。

相続人になり得るのは、両親、祖父母などの直系尊属と、子どもとその直系卑属、兄弟姉妹とその子です(おひとりさまなので、ここでは配偶者はいないものとします)。

相続人の有無でおひとりさまの相続対策も変わってきます。もし相続人がいれば、たとえ生前に交流が無かったとしても、自分亡き後にはその相続人が財産を相続することになります。

面識のなかった相続人が予期せず遺産を手にすることになる・・そのようなラッキーな相続人のことを「笑う相続人」と呼びます。

■   相続人が誰もいないと財産はどこへ行く?

おひとりさまの死後、相続人がいるかいないか分からない状態の場合には、相続財産は「相続財産法人」と位置づけされ、一種の財団法人に近いものとなります。

そして利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、その旨を裁判所の掲示板に掲示、官報に載せて公告し、相続人がいれば権利を主張して下さいと呼びかけます。

誰も相続人がいないと分かると、日頃付き合いがあり面倒をみてくれた身近な人などが「特別縁故者」として請求すれば財産を受け取れる可能性があります。

特別縁故者には、生計を同じくしていた人や療養看護に努めた人など、経済的・精神的に緊密な関係にあった人について、故人との付き合いの深さや献身の度合い、生活状況などについての調査を経て認められますが、認められた場合でも財産の全部が渡されるとは限りません。

また、特別縁故者という制度自体を知らなければ、おひとりさまの周りの人たちが、自らを特別縁故者と認識して財産分与の申立を行うことはありません。

一定期間が過ぎても相続人が現れず、特別縁故者もいなければ相続財産管理人が精算手続を行い、残った財産は最終的に国庫に入ることになります。

■ おひとりさまの幸せ相続は、生前の準備がカギ

面識もない相続人や、国に自分の財産が渡ってしまうことに抵抗がある人は、生前に対策をしっかり練っておくことが大切です。

お世話になった人にお礼の気持ちとして少しばかりの財産を受け取ってほしいとか、母校に寄付したいなどの希望がある場合には、遺言書を作っておきましょう。遺言書があれば、前述の特別縁故者の例のように家庭裁判所による複雑なステップを踏むこともなくスムーズに財産を渡すことができます。また、これらの希望は遺言書がなければ実現されません。

財産の問題だけでなく、マンションを解約したり、水道光熱費の精算など死後の一切の手続についても、誰のお世話にもならない訳にはいきませんので、可能な限り生前に段取りしておかなければ、残された周りの人に大きな負担となってしまいます。

おひとりさまの人生の幕引きをよりスムーズなものにするために、次のような準備をしておくとより安心ではないでしょうか:

老後の生活設計を立て、必要ならば高齢者マンション等への住み替えを検討する

病気や認知症になったときの備えとして、見守り契約や任意後見契約などを結び、生活を支援してくれる人を確保しておく

お葬式やお墓の希望を確実に行ってもらうために、死後事務委任契約を利用し、あらかじめ依頼しておく

遺言書を作成し、財産の処分の希望を書面に残し、それを確実に実行してくれる遺言執行者を決めておく

上記の準備内容のほか、万が一の際の連絡先リストやその他の希望などをまとめて書面に残しておき(エンディングノートの活用など)、信頼できる人にその存在を知らせておく 

自分の老後や死後について漠然とした不安を抱えながら毎日を送るよりも、今できる限りの準備をしておけばその不安を安心に変えることができます。

周囲に迷惑をかけずに、最期まで自分らしく、美しく生き抜くために・・おひとりさまの幸せ相続は生前の準備次第で決まります。自分も周りもハッピーになれる、そんなエンディングを迎えたいものですね。

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