【2012年 第2回 社会保険料は必要経費】- 経営者のための社会保険・労務管理
菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール
個人事業主であっても、代表取締役であっても、経営者とは実は孤独な立場にあります。
社会保険への加入は絶対条件
社会保険料は高いから、まだいらない、うちは小さい会社だからといろいろな理由をつけて社会保険に加入しない事業主さんもおられます。
なかには「社会保険って必要なのですか」と、まったくご存じない方もあります。
でも、これは危険です。会社を立ち上げれば、人を雇用すれば、社会保険への加入は絶対条件です。
社会保険料は最初から経費としてみつもることがポイントです。
たとえば、どのくらいの給料で従業員を募集するかを考えてみましょう。
危険なことは、手取りでの発想です
「手取りで20万円は出します」などと採用の条件を説明されることがありますが、手取りとは、その人の家族状況によっても違ってくるので、経営者は手取りで話をすべきではありません。
まず、基本給、諸手当など、どのくらい給与として出せるのかということです。もちろん、遠方から通勤する人を採用すると、通勤手当が大きくなることもあるので、支給総額を考えておきます。
そのとき、社会保険料をプラスして、法定福利費を含めた人件費で考えることです。
基本給と諸手当で20万円とした場合でも、それに社会保険料の事業主負担分が必要となるので、実際に一人分の人件費は多くなります。
そこまで含めて、いくら出せるのか、人件費予算をどう組むかです。
加入義務のある保険は労災保険・雇用保険・健康保険(介護保険)・厚生年金保険です。
人を採用すれば、まず、労働基準監督署で労災保険の成立届を出します。労災事故が起こってから成立届を出すと、ちょっとめんどうですので、できるだけ早く出しておきましょう。
そして、週に20時間以上働くスタッフを採用したのであれば、雇用保険の手続きをします。
雇用保険は退職後の給付をうけるとき、1日違っていても給付金に影響が出ることがありますので、後々もめごとにならないように、採用初日から正しく加入手続きを取ってください。
労災保険料と雇用保険料は、労働保険料として、1年間でまとめて(金額が多い場合は年3回分割)支払います。支払い時期にはまとまった資金が必要になりますので、資金繰りも必要です。「まとめて払えません、なんとかなりませんか」というご相談をいただくこともあります。
健康保険と厚生年金
次に健康保険と厚生年金。これらは嫌われ者になりがちです。
保険料が高いので、経営者もすぐに入れたくないとか、加入する本人も、夫の扶養に入っているほうがよいので、入りたくないとか、「入りたくない」が一致して加入しないということはありがちです。
しかし、年金記録問題のように、将来年金を受給するときになって、加入してくれなかったなどの苦情につながることもあります。
加入を怠っていると、調査が入ったとき、最長2年前までさかのぼって加入の手続きをすることになり、多額の保険料が請求されます。(実際にこのケースはよくあります)
会社ばかりではなく、個人負担分もありますので、社会保険のさかのぼりが大きなトラブルとなって、事業に影響することもあります。
こんなところで、よけいな労力を使いたくないですね。
健康保険・厚生年金は、社長がひとりという会社でも加入義務があります。労災保険や雇用保険では、社長は対象外ですが、法人の場合は、社長ひとりでも健康保険・厚生年金に加入しなければなりません。
反対に個人事業主の場合は、従業員は加入できても、事業主は加入できません。
会社をはじめようという心意気のある方は、社会保険未加入で、経費を節約しようとは思わないでくださいね。これは必要経費と考えて、予算づくりをしてください。
健康保険・厚生年金の加入手続きは、以前に比べると、添付書類も少なくなり、手続きしやすくなりました。
社会保険料を節約する方法というものもよくみかけます。たとえば、事業が発展して、多額のボーナスを支給する場合に、年に2回支給するより1回で支給した方が保険料を節約できるとか、4月~6月の残業を減らすとか、ないことはありません。
起業の場合は、会社負担の保険料を人件費として予算に入れ、法律どおりに加入する、それが会社発展へつながっていくと考えてください。
この記事へのコメントはありません。