労働基準監督署がやってきた!【2012年 第9回】

【2012年 第9回 労働基準監督署がやってきた!】- 経営者のための社会保険・労務管理

菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール

会社を経営していると、「人」の問題が絶えることはないでしょう。なんとか社内で解決できればよいのですが、従業員や退職した元従業員が労働基準監督署に訴えることもあります。そのときは、監督署が調査にやってきます。従業員からの訴えがなくても、定期的な調査があります。「労働基準監督署がやってきた!」と慌ててしまうこともあるでしょう。

今回は労基署からの調査を受けたときの対応についてお話しします。

ある日突然、「○○労働基準監督署です」という訪問を受けることがあります

私の顧問先にそういうことがあれば、すぐに連絡していただくように日頃からお話しているので、私が対応します。

しかし、顧問社労士もいないし、はじめての経験とあっては、どう対応してよいか、混乱してしまいますね。

労働基準監督署が調査にくる、あるいは呼び出しされることがありますが、その理由はいろいろです。

たとえば、従業員の死亡など、大きな労災事故が起きた場合は、監督署はその日のうちに調査に来ます。こういった場合は、事故現場などの実地調査が目的ですから、きちんと対応してください。

労災事故は別として、突然、監督官が会社にやってくることがあります。

事と次第にもよりますが、責任者が不在であったり、業務多忙であったりする場合は、本日は調査に応じられないとお断りしても問題ありません。ただし、後日、対応できる日を決めて、調査を受けるようにします。

調査の場合、労働者の申告によるものか、定期的な調査かを、あらかじめ確認するとよいでしょう。

労働者の申告によるものであれば、たとえば解雇予告手当が払われていないとか、時間外手当が払われていないとか、何らかの問題があってのことです。

最初に、「本日の調査はこの問題ですね」と調査の範囲を確認しておくことも大切です。

そうすれば、範囲外のことまで調査が及ぶことを防げるでしょう。

あることが原因で受けた調査が、まったく関係のないことまでに及び、是正勧告を受けるというケースがありました。

もちろん、正しく対応していないことが悪いのですが、最初の目的とは違うことで、是正勧告を受けると、わりきれないものが残ります。

定期的な調査では、一般的なことをすべて調査されます。

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、労働条件通知書などは、当然備えておかなければなりません。

労使協定があるか、就業規則を作成し届けているか、届けている場合でも就業規則の内容が古くなっていないかなどもチェックされます。

有給休暇の管理表まで確認されたこともありました。

経営者が心配されるのは、時間外労働や休日出勤について調査の結果、支払いを求められるのではないかということです。

(思い当たることがあるからでしょうが・・・)

しかし、監督官は、違法状態の是正を求めることはできますが、「支払い命令」は出せません。支払い命令を出せるのは裁判所だけです。

本来は2年間さかのぼって支払うべきところ、3ヵ月だけ支払えばよいなどという裁量は監督官にはありません。

問題になるのがタイムカード。タイムカードどおりに支払っていないといわれることもありますが、タイムカードが正確な労働時間を示しているとも言えません。

タイムカードは出退勤の確認であり、時間外については「時間外申告書」により承認したものについてのみ時間外手当を支払うなど、事前に就業規則等に定めておくと、リスクは回避されます。

調査を受けて、いろいろな指導を受けたら、そのあとの対応が大切です。報告書を求められますので、期日までに対応しましょう。どうしても期日に遅れるようであれば、連絡を入れておきます。

監督署の調査を受けてもまったく問題がないというように、日頃からの管理が必要ですが、なかなか難しいことです。

調査を受けたのちは、前向きに改善していく機会とすることができればいいですね。

ごくまれではありますが、労働者が理不尽な要求をもって監督署等に訴えることもあります。

そういうときは、毅然とした態度で不当な要求は受け入れないということも必要です。

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