日本財政の行く末【2010年 第3回】

【 2010年 第3回 】日本財政の行く末 資産運用に必要ないまどきの経済知識

 

有田 宏 ⇒プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


表は日本国政府の2008年度から2010年度までの予算(2010年度は予算案・2010年2月22日現在)

リーマン・ショック前の予定では2011年度にプライマリー・バランスを黒字化する目標であった。

プライマリーバランスとして公債金収入と国債費を除いた収支で見た場合次のとおり。

歳入は租税とその他の収入の計、歳出は一般歳出と地方交付税の計、それから“歳入-歳出”を計算する。

 

2008年度   -51,848億円  

2009年度  -130,503億円

2010年度  -229,457億円

 

 2008年の収支を考えれば2011年のプライマリーバランスの黒字化もあながち夢物語とはいえなかったであろう。
しかし2008年8月のリーマン・ショックに始まる世界的金融危機。
それに伴う緊急の財政政策と租税収入の大幅な減少。
2011年度の目標もはるか遠くのかなたに消え去ってしまった。

しかも先の数字はあくまでも当初予算ベース。
その後の補正予算は加味されていない。
さらに2009年と2010年のその他の税収の急増は、いわゆる埋蔵金の取り崩し。
本来プライマリーバランスの収入に入れるのは適切かどうか?

実態は先の数字よりもさらに悪化している。

 2009年4月に財務省より報告された、2009年度末の国の国債・借入金残高の見込みは906兆円。

「2009年末には国と地方を合わせた政府部門の正味資産がマイナスに転じた模様。
さらに国だけに限れば、正味資産は2008年末には300兆円を超えるマイナスに陥っている。」(2010年2月22日付日本経済新聞記事・要約)

 2010年度の歳入は公債金が税収を上回る見込み。
このような財政は将来的には維持が不可能であろう。
そして将来の年金等の社会保障への不安も高まる。
将来に不安を抱えたまま、国民が消費を増やすことは考えにくいのではないだろうか。

 政府による財政支出を増やすほど、財政赤字は悪化。
そして国民は消費をさらに控えるようになる。
そう考えると財政政策の効果は一時的なものに過ぎなくなるであろう。

  消費を増やすために必要なことは将来の不安を抑えること。
そのためには、一度崩壊した財政再建の行程をもう一度造り直すこと。
そのために、歳出削減とともに消費税をはじめとした増税も避けられぬであろう。

 財源的に不確実な高額の年金よりも、額としては多くはないが、財源により裏打ちされた確実な年金の方が将来の不安を鎮める効果は高いであろう。

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