【2010年 第8回 個人向け国債の選び方】 資産運用に必要ないまどきの経済知識
有田 宏 ⇒プロフィール
2010年7月より個人向け国債に新たな商品が投入されました。
3年固定金利型です。
安全資産として運用するのなら、筆頭候補に挙げられるのがスーパー定期預金です。
しかし金利が低くてもの足りないと思っているのなら…。一部の銀行で扱っている“仕組み預金”は銀行が満期日を決める。
しかもその不確定な満期までは原則として中途解約できない。
急に現金が必要になっても換金できない、という大きな流動性リスクを抱えることになります。
そこで、候補とあげられるのは国債です。
ただし日本の財政も非常に厳しい状況にありますが、とりあえず今回は日本国債は安全、つまり債務不履行の可能性はないという前提で話を進めます。
個人でも購入が容易な国債としては新型窓口販売国債(新窓販国債)と個人向け国債が有ります。
個人だからと言って個人向け国債を買わなければならないということはありません。
新窓販国債も購入できますので、それぞれ商品性を比較してご自身の資金計画に合う商品を選択できます。
以下の表に新窓販国債と個人向け国債の期間別の商品概要を示します。
※基準金利 直近の同一期間の利付国債利回り
ではそのうちの個人向け国債の商品特性を新窓販国債と比較したうえで期間別にみていきましょう。
個人向け国債3年物
1.個人向け国債3年物
3年物は新窓販国債には無いので、3年ということにこだわれば個人向け国債しか選択肢はありません。
ただし、1年間は原則として換金できませんので注意してください。
中途換金の場合は直近2回の税引後利子相当額が控除されます。
ちょうど1年目に換金する場合の計算式は以下のようになります。
換金額=元本-利息×0.8(税引後相当額)×2
この換金額に受け取り済みの税引後利息を加えれば1年間の収益はプラスマイナス0となります。
個人向け国債5年物
2.個人向け国債5年物
新窓販国債5年物との比較になります。違うのは中途換金の場合。新窓販国債は中途換金時の場合の元本保証はありませんが、随時可能です。
個人向け国債は原則として2年間換金できません。
2年以内に換金する可能性が少しでもあれば新窓販国債を選ぶしかありません。
個人向け国債の基準金利からの控除率は0.05%と僅かです。5年間持ち続けるのであれば、市場が大きく変動している場合でもない限り、双方の金利が大きく異なることはないでしょう。
結論から言うとどちらでも構いません。
2年以上5年以内に中途換金する可能性がある場合。今後市場金利が大きく上昇すれば新窓販価格の時価の下がり方は10年物程とはいかないまでも大きくなることも考えられます。
一方市場金利が下落すれば時価は上昇つまり額面以上の金額で売却できます。
個人向け国債は必ず直近4回の税引後利子相当額控除というペナルティが有ります。
新窓販国債の時価が下がるといっても満期が近くなれば額面額に収斂します。
どちらかというと新窓販国債に分があるように見えます。
個人向け国債10年物
3.個人向け国債10年物
個人向け国債10年物は変動金利という特徴があります。
固定金利と変動金利の金利を比較することは間違いです。
個人向け国債10年物は3年や5年の個人向け国債はもちろん、新窓販国債10年物とも表面金利を単純に比較することは意味がありません。
ただし基準金利からの控除率が0.8%と大きいのが気にはなるところですが。
要はこれから金利が大きく上昇するかどうか。
金利の上昇幅が大きければ結果的に個人向け国債10年物が良かったということになるでしょうし、そうでなければ新窓販国債10年物の方が収益率は高くなります。
個人向け国債5年物の商品性を考える
個人向け国債の過去の販売実績から5年物の人気が高いようです。
10年物との表面金利を単純に比較しているようにも感じられます。
10年物は変動金利で基準金利からの控除率も大きく結果的に5年物よりも金利が低くなっています。
しかしそもそも変動金利と固定金利では比較の対象になりません。
特に個人向け国債5年物は新窓販国債5年物と比べても明白な利点は見出せません。
唯一2年から5年の間に中途換金し、かつ市場金利が急上昇して場合のみ個人向け国債5年物の優位性が出てきます。
もっともそのような場合は変動金利の個人向け国債10年物を選んでも良いわけです。
ということは、金融商品としての個人向け国債5年物の存在価値はいかほどのものか?
特に個人向け国債5年物は換金できない期間が2年間と、3年物や10年物と比べて長くなっていますので、購入には注意が必要です。
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