退職後の年金手続き【2016年 第5回】

【2016年 第5回 退職後の年金手続き】退職を考えたときに読むコラム

菅野 美和子(スガノ ミワコ)⇒ プロフィール

会社にお勤めしている間は、健康保険料や厚生年金保険料は自動的に給与から控除されるので、あまり考えることはないかもしれません。
退職後、病気になると困るから、健康保険についてはすぐに手続きするでしょう。
しかし、年金については後回しになってしまうことが多いのでは?
退職後の年金の手続きも大切です。

退職後は国民年金へ加入

日本国内に住む20歳から60歳未満の人は国民年金に加入しなければなりません。
入りたい、入りたくなどの本人の気持ちとは無関係で、強制加入です。

会社を退職すると、厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。
速やかに国民年金への加入手続きを行いましょう。
なお、配偶者が働いている場合、扶養として第3号被保険者となる可能性がありますので、配偶者の勤務先で確認してください。

退職後の国民年金への手続きは簡単。「健康保険・厚生年金保険資格喪失連絡票」という証明書を会社が発行してくれますので、これや年金手帳など必要な書類を持って、年金事務所や市区町村役場の国民年金課の窓口で手続きします。

扶養する配偶者のいる人は、配偶者の手続きも合わせて行います。
これまで第3号被保険者(会社員の妻、あるいは夫)として保険料負担のなかった配偶者も、国民年金の第1号被保険者となり、自分自身で保険料を納付しなければなりません。

「もうすでに年金を受け取れるだけの加入期間があるので、入らなくてもよいのでは?」と質問を受けることも多いのですが、60歳になるまでは強制加入です。すでに年金を受け取れるだけの加入期間を満たしている人も、加入しなければなりません。

国民年金保険料

平成28年度の国民年金保険料は16,260円です。所得の多い人も少ない人も同じ額です。

妻を扶養する夫が退職したとき、退職後は夫婦ふたり分の保険料を負担することになります。

失業中の生活は雇用保険からの失業給付が頼りですが、失業給付だけの生活では、国民年金保険料を納付するのはきびしいかもしれません。
保険料納付が困難なときは、保険料免除を申請することができます。

国民年金保険料の免除については、前年(1月~6月に申請する場合は前々年)の所得が基準以下であれば承認されます。
たとえば、平成28年9月30日に退職した人は、1年間フルに働いていた平成27年分の所得を基準にして審査されるわけです。

フルに働いた年の所得が多いのは当然のことで、そのため保険料免除に該当しない人も出てきます。
収入がないのに免除が認められないなど、困ったことになりますので、退職者に限っては、前年の所得は審査の対象から除外されています。

退職したことが確認できる書類、雇用保険の離職票などを持って免除申請してください。

注意しておきたいのは、共働き世帯です。

免除の審査では、世帯の所得が合算されます。
世帯の所得とは、免除申請をする本人と世帯主と配偶者の所得です。

本人の所得は審査から除外されても、配偶者や世帯主の所得が多ければ、免除と認められないことがあります。
そうなると、保険料を払うしかありません。

未納に注意

国民年金の手続きをしなければどうなるでしょうか。

本人が手続きしなくても、会社からの連絡で退職したことはわかるので、そのうちに国民年金保険料の納付書が届きます。
時が経過すれば、納付額もまとまった金額になり、さらに負担感は増していきます。

未納のままでは解決しません。
保険料の請求は続き、最終的には強制執行されることもあります。そんなふうにはなりたくないですね。

また、保険料を滞納している間に、事故に遭ったり病気に罹ったりして、その後重い障害の状態になることもあります。

障害年金を受け取れるかどうかは、保険料納付状況が決め手です。未納が原因で障害年金を受け取れないこともあります。
保険料の納付状況は初診日の前日を基準にして確認します。
あとで納付しても障害年金がもらえないということになりますので、未納の状態は早く解消しましょう。

なお、免除申請は申請時点から過去2年1ヵ月までさかのぼって行うことができます。

年金の保険料を支払うということは、老後に備えるばかりではなく、病気やケガといったリスクに備えることになります。

会社に勤めている間は会社がやってくれていたことも、退職後は自己責任です。
あとで困ったことにならないように、気を配っておきたいですね。

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