【2016年 第2回 海外に投資するための金融商品その①「海外ETF」】海外投資のイロハを学ぶ
永柄 正智(ナガエ マサトモ)
前回は海外投資の必要性についてお話ししました。
今回からはどのような金融商品を使えば海外へ投資を行うことができるのかお話を進めていきます。
海外に投資をするための商品として一般的に挙げられるのは、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や穀物などの商品)などですが、海外投資の初心者がいきなり個別の外国株や海外不動産などを購入することは、非常にリスクが高くおすすめしません。
そこで最初に検討の対象となるのが「海外ETF」の活用です。
まずは「ETF」の基本を押さえる
ETFとは、Exchange Traded Fundの頭文字を取ったものであり、日本語では「上場投資信託」と訳されています。
商品の仕組み自体は一般的な投資信託とあまり変わりがありませんが、「上場」という名のとおり、世界の主な証券取引所に上場され、株式と同じように取引時間中に売買が可能な点が投資信託とは異なります。
ETFは、「TOPIX(東証株価指数)」や「S&P500」(米国の代表的な株価指数)などに代表される株価指数への連動を目指すものや、債券、不動産、コモディティ(商品)などを投資対象としたものなどもあり、ETFを購入することで、幅広く海外へ投資をすることが可能になります。
特に株価指数への連動を目指すETFは対象の株価指数の値動きとほぼ同じ値動きをするように運用されるため、株式市場全体に投資していることと同様の効果が得られます。
したがって個別株などへの投資とは違い、株式市場そのものを投資判断の対象にすればよく、投資先選定の負担が軽くなるというメリットもあります。
また、ETFは投資信託などに比べて、継続して保有する場合に掛かってくる「信託報酬」が低く抑えられています。
投資商品の保有コストは、低ければ低いほど投資の成果に対してプラスの影響を与えますので、投資期間が長くなればなるほど複利効果によってその効果の恩恵を受けやすくなります。
<ETFと投資信託、株式との比較>
(筆者作成)
海外に幅広く投資できる「海外ETF」
2016年1月末現在、世界の株式市場に上場されているETFは6,000本近くもあり、運用資産残高は約2兆8,140億USドル(約320兆円)に達しています。
世界のETF資産の約7割はアメリカに集中しており、アメリカ市場に上場されているETFの資産内容は、米国株以外にも世界各国の株式や債券、REIT、コモディティーなど多様な商品で構成されており、約90%が日本株で構成されている日本のETFとは大きく異なります。
従って、個人投資家は世界各国の主要な株価指数に連動するETFを組み合わせるだけで、世界全体にバランス良く投資を行うことが可能になるのです。
また最近では株価指数に連動するETF以外にも選択肢は大幅に増えてきています。
債券や不動産に投資するものや、金や貴金属、穀物などの商品指数に連動するものなどが次々に登場しており、投資家はそれらを適切に組み合わせることで、国や地域を分散させるだけではなく、保有する資産の種類も分散することが可能になってきています。
投資の基本は「4つの分散」
投資を成功させるための基本は、「資産」「国や地域」「通貨」「時間」の4つを分散させることだと言われています。
「卵はひとつの籠に盛るな」という格言がありますが、投資のリスクを出来るだけ回避するためには、ひとつの国やひとつの商品に「集中投資」や「一括投資」はせずに、投資対象と投資機会を分散させることが重要です。
そのような意味で、海外ETFは海外投資のツールとして最も有効な金融商品のひとつでしょう。
これから海外投資を検討している方は、「海外ETF」から始めてみるとよいのではないでしょうか。
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