【 2009年 第 4 回】世界的スーパー通貨が、G20で検討課題となるのか? 資産運用
大山 潤(オオヤマ ジュン)
優れた投資家として広く知られる、ソロス・ファンド・マネージメントのチェアマン、ジョージソロス氏は、3月22日のFT誌への寄稿の中で、4月2日にロンドンで開催されるG20は、「のるかそるか」のイベントになると書いています。
アメリカとドイツの関係
この記事を引用したFT誌のAlphavilledでは、まず会議の成功を決定づけるための要因として、民間セクターの信用機能が崩壊したアメリカと、ハイパーインフレーションの記憶によるトラウマを抱えているドイツの2国の関係をあげています。
とにかく輪転機を回してお金を刷りまくっているアメリカと、インフレが怖くて「それ」をしたくないドイツの主張がぶつかっているという状況を、G20の協力体制確立のためにすり合わせる必要があるということでしょう。
国際通貨基金の特別引出権(SDR)の利用
もし二国が共通基盤を見つけるのに失敗すれば、「周辺国(periphery countries)」にとってのリスクは最大となり、また先進国に与えるダメージは膨大なものになるだろうとみているソロス氏は、この矛盾を解消する手段の一つとして、国際通貨基金の特別引出権(SDR)の利用を提案しています。
SDRによって国際的に貨幣が創造され、豊かな国(自分でお金を創造できる国)は、困っている国に、配分された貨幣を貸し出さなければならない、というスキームです。IMFの資金の増額は一度限り(単発)のものですが、それに加えてリセッションが続く限り、SDRは毎年2,500億ドルとも言われる巨額の発行が繰り返されるとのこと。
この提案の合意を得るために4月2日のG20会議を待つのは時間がかかり過ぎだが、それでもこの議案がオバマ大統領によって提起され、他の誰かによって支持されるなら、市場に安心感を与え、会議を大成功に向かわせるのに十分だろう、とも付け加えています。
SDRの活用法の異なる視点
さて興味深いのは、ソロス氏やトルーマン氏がSDRを、世界経済を再始動させ、財政崩壊から周辺国を守るために、世界的にヘリコプターで現金をばら撒くことを誘導する機能として見る一方で、中国とロシアは新たな世界準備通貨(基軸通貨)への手段としてそのシステムを主唱している点です。
中国の中央銀行総裁の周氏は、「SDRは、スーパーソブリン準備通貨としての役割を果たすための特徴と可能性を持っている。」と述べるとともに、同行のウェブサイト上に掲載した論文の中で、「国家主権を超越した準備通貨の創設を目標とする。そして国際通貨基金(IMF)のSDRの強化を提案する。」とも述べています。
外貨準備として世界最大のドルを抱える中国にとって(ロシアは第3位)、ドルの通貨価値の下落をどのように考えているのでしょうか。
いずれにせよ、IMFの機能強化と併せて、SDRや新機軸通貨といった議題が実際に扱われるのか、あるいは他に別の解決策が提示されるのか、次回G20に注目してみたいと考えています。
ft.com/alphaville:http://ftalphaville.ft.com/blog/2009/03/25/53988/is-a-global-super-currency-on-the-agenda/
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