【 2009年 第 9 回】米住宅市場、サブプライムではなくプライムの延滞率の急増 資産運用
大山 潤(オオヤマ ジュン)
アメリカの住宅市場が安定してきた、住宅価格が下げ止まった、セクターによっては住宅価格が上昇を始めた、といったニュースをメディアで目にするようになりました。
一方で、売買されている住宅は差し押さえ物件のオークションが多いことや、依然として在庫が高いレベルにあることも指摘されています。
それでも全く買い手が存在せず、値段がつかない状況の時よりは、多少なりともマーケットに流動性が戻ってきたことはよいことだと思いますが・・・。
デリィンクエンシー・キュア・レート(滞納している状態から支払いが回復する割合)の劇的な低下
米国のRMBS(住宅ローン担保証券)の支払いが延滞されるペースは最近鈍化(改善)してきているものの、この改善は2006年から顕著になり始めたデリィンクエンシー・キュア・レート(滞納している状態から支払いが回復する割合)の劇的な低下によって圧倒されている。さらにアンダーウォーター(住宅の資産価値よりもローン残債の方が多い状態)の債務者がこの傾向を促進している、とFitchレーティングスがレポートしています。
キュア・レートは、プライムでは2000-2006年までの平均45%から6.6%へ、Alt-Aでは平均30.2%から4.3%へ、そしてサブプライムでは平均19.4%から5.3%へと急激な落ち込みを見せています。例えばプライムの人は一度支払いを滞納してしまったとしても、その中の45%の人は支払いを再開できていたが、現在では6.6%の人しか支払いを再開できない、残りの人は家を手放しているということを意味します。
失われたプライムの強み
プライムはこれまで滞納率の低さと滞納している状態からの支払い再開率の高さから、サブプライムなどの他のセクターとは明確に区別されてきましたが、いまやこの強みは失われてしまったようです。悪いことに、この支払が再開されるローンの25%は、当初の条件から返済条件を緩和したローンで、再び破綻する傾向が高いようです。
以下の図(Calculated Riskより引用した)では、プライムの延滞率が急増していることが判ります。
米住宅バブル崩壊当初は、サブプライム層の住宅ローン延滞率が問題視されていましたが、すでに米住宅ローンの約8割を占めるプライム層のローンにまで延滞率は拡大してきています。
Fitchのマネージング・ディレクターRoelof Slump氏は、滞納率の動向に関わらず、こうしたキュア・レートが同時に回復してくるまでは、住宅市場の安定やパフォーマンスの改善について議論することは難しいと発言しています。
Calculated Risk:http://www.calculatedriskblog.com
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