【 2009年 第 9 回】協会けんぽ発足から1年を振り返る トピックス
當舎 緑(トウシャ ミドリ) ⇒プロフィール
「協会けんぽ」ってどこの団体?
私は、社会保険労務士として何社かの顧問もしているのですが、先日、ある会社から電話がかかってきました。
それは、「健康保険証が切り替わるから、古い健康保険証を返送して下さいという書類が送られてきたのですが、健康保険証を送ってしまっても構わないのでしょうか?」という内容でした。
最近は、公的な団体と間違えるようなまぎらわしい名称をつけている民間団体があります。
保険証は、お金も借りられる大事な本人確認です。
その大事な保険証を、この、あまり知らない団体に送ってもいいのかという疑問も、協会けんぽが行う保険証の切り替えスケジュールが、「随時」ということを知っていたら、何のことはなかったかもしれません。
一斉ではなかったために、周りはまだなのに、うちだけ?という疑問がわくのも当然でしょう。
同じ場所で窓口は別
協会けんぽは、都道府県ごとに、支部が一つずつしかありません。
そこで、県ごとに、いくつかある社会保険事務所内に、協会けんぽの窓口が設けられました。
協会けんぽに変わるまでは、一つの窓口で、すべての手続ができたのに、健康保険の加入などの手続きは、社会保険事務所の窓口に、傷害手当金などの給付金関係は、協会けんぽの窓口に並びなおすという手間が発生しています。
また、社会保険事務所で、社会保険の加入手続きを受け付けて、協会けんぽから健康保険証を郵送しているために、保険証を受け取るまで、数週間「待つ」必要があります。
ただし、加入の手続きの際に、資格証明書の発行申請をしておくと、手続をしてから、しばらくの間、その資格証明書を使って、医療機関にかかることはできるのですが。
急に必要になったときでも、窓口で、すぐに保険証を発行してもらえた昔の対応は便利だったなあと思ってしまうのは私だけでしょうか。
合算って何?
健康保険には「高額療養費」という制度があります。
健康保険の給付というのは、原則として、申請主義ですので、知らないままに、高額の医療費を払いっぱなしということが、これまでありました。
実際に、「高額療養費」の申請もれが、非常に多いということで、まだ申請していない方には、通知が必要ではないかという議論もされました。
でも、協会けんぽに変わっても、通知がされることはなく、自分で自己負担額の限度額を計算して、申請しなければなりません。
自己負担額の限度額は、協会けんぽのHPで公開されていますが、所得別の数式になっていますし、じゃあ実際にいくら医療機関に払ったら、高額療養費の請求が出来るのかと、人からよく聞かれるような、非常に分かりにくい制度は相変わらずです。
さらに合算なんて
払った医療費に、さらに介護費用との合算をすると、申請ができる「高額介護合算療養費」が、21年8月から始まっています。
この制度にも、自己負担額の限度額があり、一般の区分であれば、89万円(70歳未満の方がいる世帯)です。
ただし、この限度額からは、保険外の療養費や入院時の食事療養費・生活療養費は除かれます。
今回は、制度ができて最初の申請ですので、20年4月から21年7月まで、16カ月間分の合算額を集計していくのですが、それだけ多くの領収書を、対象外の負担額を除きながら、合算するというのは、非常に難しい作業となるでしょう。
高額な自己負担をしていても、払った先が、医療機関と介護施設と別々に分かれていると、どこからも、通知はされず、自分で計算するしか方法はありません。
協会支部ごとの保険料率なんて
協会けんぽが発足して、1年たった21年9月。
支部ごとに別々の保険料率が適用されます。
発表された保険料率は、もともとの8.2%から、変更後の料率は8.15%から8.26%と都道府県ごとに、ばらばらな数字が混在しています。
この数字の変更については、初めてですのではっきりしたことは言えませんが、支社など、会社機能がいろいろな地域にある会社ならば、保険料率の低い地域に本社機能を一括するなど、保険料節約のための会社の対応策として、工夫の余地があるかもしれません。
今後、この変動幅がどれだけ広がるのか、見守っていきたいところです。
これから?
政権交代があり、これから新たに発足される「年金機構」すら、どうなるかはわかりませんが、これまで、一元的に健康保険と厚生年金保険が処理できていたことが、「効率」という名の元に、協会けんぽの仕事として、分離されました。
先日、ある社会保険事務所で、違う管轄の会社のことを調べてもらおうとすると
「管轄外なので、これ以上は申し上げられません」と言われました。
コンピューター上は、ネットワークでつながっているのです。
これも、機密を守るためとか、いろいろと理由はあるのでしょうが、善意の人間にとっては、不便なことです。
結局、管轄の社会保険事務所で「これは任意の様式ですが」という書類を出すよう求められ、決着。
これから、どこの支部の管轄の社会保険なのかによって、サービスやメリットが違っていくことがないのか、引き続き、協会けんぽの動きに注意していく必要があると思っています。
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