【2013年 第5回 親の老後のライフプランにどのような影響があるのか?(資金編)】
”フリーター”親子のライフプラン、キャリアプランへの影響
岡田 佳久(オカダ ヨシヒサ)⇒ プロフィール
お子様がフリーターの場合、本人だけではなく、親御さんにも色々と影響が及ぶ場合があります。そこで、2回に分けて、具体的にどのような影響が及ぶのか?をお話していきます。今回は、親御さんの老後(資金面)に関してです。
■お子様への生活費の負担は、老後の生活費の準備に影響する
誰もが必ずおとずれる老後の生活に対し、経済的不安を感じておられる方は多いと思います。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2011年/平成23年)によると、老後の生活を心配する理由として、年金や保険なども含めた金融資産が十分でないことを70%以上の方が挙げられています(<図表2>参照)。また、現在の生活にゆとりがなく、老後に対する準備ができていないと回答された方も多く、とにかく子どもを自立させるためにと、教育費を捻出することを最優先に考えてこられたことが想像できます。
しかし、前回までのコラムでお話してきたように、大学を卒業しても正社員への就職ができず、やむを得ずフリーターとして働いているケースが増えているのが現状です。
フリーターの場合、単身で生活している場合もありますが、多くは親と同居しています。
私たち、ファイナンシャル・プランナーがライフプランのご相談に応じる場合、お子様が学校を卒業された後は、お子様は独立するといった設計をご提案するのが一般的です。
学校卒業後、ご結婚されるまでは実家で親と同居される場合でも、正社員として就職している場合は、一般的に家に生活費の一部を負担してもらうなど、親の経済的な負担はほとんどかかりません。
しかし、お子様がフリーターの場合、収入が低い場合も多いため、家に生活費の一部を負担してもらうことが難しい場合も多くなっています。お子様への教育費の負担は発生しないとともに、毎月であれば、わずかな負担かもしれません。しかし、このコラムの第2回目の時にお話しましたが、一度フリーターになると、そこから抜け出すのがなかなか難しいのが現状です。ですから、長期にわたって、お子様への生活費の負担が発生する可能性もあるのです。したがって、親の経済的負担も重くのしかかってくることになります。
<参考>
・毎月のお子様への生活費の負担が2万円であった場合
(1年間)2万円×12ヶ月=24万円
(10年間)2万円×12ヶ月×10年間=240万円
(20年間)2万円×12ヶ月×20年間=480万円
・毎月のお子様への生活費の負担が3万円であった場合
(1年間)3万円×12ヶ月=36万円
(10年間)3万円×12ヶ月×10年間=360万円
(20年間)3万円×12ヶ月×20年間=720万円
また、親の収入が何らかの理由で減少した場合、親が会社を退職し、年金生活に入った場合に、同居しているお子様への生活費の負担が重くのしかかってきます。負担が重くのしかかるのであれば、まだ何とか生活をしていくことが可能かもしれませんが、最悪の場合、親子共倒れになってしまいます。
なお、今後も収入が減少しない場合であっても、親自身の老後の生活費の確保が難しくなってしまうことに繋がり、親のライフプランにも大きく影響を及ぼすことになります。
<図表1>では、「老後の生活についての考え方」のアンケート結果ですが、多くの方が老後の生活について「心配」されています。また、その理由<図表2>は、十分な金融資産を確保できないといった心配となっています。お子様への生活費の負担によって、これらの心配はさらに大きくなることが予想されます。
<図表3>では、「老後の準備資金について」のアンケート結果ですが、「準備しておけばよいと考える金額」と「実際の金融資産保有額」とのギャップが大きくなっています。特に50代においては、そろそろ老後の生活を意識しだす頃ですが、そのギャップが約1,000万円近くにもなっています。
■もし、将来、介護が発生した場合・・・
老後の生活費を準備する時に、最初に頭に思い浮かぶのは毎月の老後の生活費の確保だと思われますが、それだけではありません。
現在、公的介護保険は支給限度基準額までであれば、かかった費用の1割が自己負担となっていますが、今後、自己負担の割合が2割になる可能性があります。したがって、各ご家庭の状況にもよりますが、<図表3>の「準備しておけばよいと考える金額」さえ準備できていれば、老後の生活費の確保は問題がない訳ではありません。
■わずかな負担であれば、お子様への生活費の負担はOKとは思わない
お子様が結婚され、結婚式の費用を一部負担する場合や、孫へのお小遣いを渡す場合もあるとは思いますが、これらの資金はあくまで一時的なものです。
同居しているお子様への生活費の負担は、特にお子様がフリーターの場合は長期にわたる可能性があります。そして、その負担がお子様にとっては「今、何とかなっているので大丈夫!」と思わせているケースもあります。
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