【2013年 第8回 パートで働くか、フルタイムで働くか】女性のための社会保険アドバイス
菅野 美和子 ⇒プロフィール
結婚や出産で会社を辞めた方も、子育てが一段落すると、再就職を考えることもあります。そのとき、パートで働くか、フルタイムで働くか、働き方を考えるでしょう。女性が再就職するにあたって、どのように働き方を選択すればよいのでしょうか。
パートで働くか、フルタイムで働く
A子さんは2人の子どものおかあさんです。2人目が小学1年生になったのを機に、仕事を再開しようと考えています。現在は会社員の夫の扶養になっていますが、出産までは一般企業で経理の仕事をしていました。簿記の資格を持っていますし、できれば同じ仕事に就きたいと思っています。
子どもがいるのでパートで働く方が現実的かな、将来を考えてフルタイムで働いた方がいいかなと、あれこれ考えています。
友達に話したところ、「扶養の範囲内で働くほうが結果としてプラスになるのでは?」と言われました。確かに扶養からはずれると、税金も払わなくてはいけないし、自分で医療保険や年金に加入すると、かえって負担が増えるかもしれません。
しかし、実のところ、A子さんにはよくわかりません。
まず、所得税ですが、妻の給与収入(非課税の通勤手当は除く)が103万円以下であれば、夫は配偶者控除を受けられます。夫の給与所得から38万円分を配偶者控除として差し引いて所得税を計算しますので、その分夫の所得税が少なくなります。
妻の給与収入が103万円を超えると、配偶者控除は対象外になりますが、配偶者特別控除があります。103万円を超えたからといって、いきなり所得税が増えるというわけではありません。
配偶者特別控除は妻の収入が増えるにしたがって段階的に控除額が減っていき、141万円を超えると配偶者特別控除の対象外となります。
つまり、103万円を超えると、妻の収入に応じて段階的に夫の所得税が増えていきますが、妻の収入も増えていますので、世帯としての手取りは増えていきます。
A子さんの夫の会社には配偶者手当(家族手当)はあるでしょうか。
配偶者手当の有無、金額、支給要件は企業ごとによって異なりますが、配偶者手当を支給する場合、103万円以内を基準にしている企業も多いです。
そのような企業では、103万円を超えると配偶者手当がカットされますので、妻の収入が増えても世帯としてはマイナスになることもあります。ただし、配偶者手当がない企業にお勤めの場合や自営業の場合は、何の問題もありません。
さらに、収入が130万円(非課税の通勤手当も含めて)を超える見込みとなれば、夫の健康保険の扶養家族からはずれてしまい、国民年金の第3号被保険者にもなれません。
そのとき、妻は自分自身で国民健康保険・国民年金に加入しなければなりません。毎月の国民年金保険料は15,040円(平成25年度)です。国民健康保険は市区町村によって異なりますが、少なくとも、毎月併せて2万円以上の保険料負担が考えられます。
そうなると、130万円を少し超えるくらいの収入では、手取りは逆転してしまいます。
160万円から170万円程度の収入があってこそ保険料や税金増額分をカバーできるでしょう。
A子さんは、子どもが小学校低学年のうちは、時間的な制約もあるので、夫の扶養範囲内でパートの仕事を探すことにしました。
次に、B子さんは、出産で会社を辞めたものの、子どもが3歳になり、保育園に入れることになったので、フルタイムで働くことにしました。
B子さんがフルタイムで働くと、税金や社会保険料の負担も当然のことながら、保育料の負担も大きく、フルタイムでもパートタイムでも手取りはかわらないようです。
しかし、B子さんはフルタイムで仕事をはじめることにしました。
働くということはお金だけではなく、自分らしい生き方を追及するということだとB子さんは思っています。
子育ては永遠に続くものではありません。やがて子どもは親から巣立っていきます。その後、自分らしく生きていくためには、仕事を続けていきたいとB子さんは思っています。
当初はいろいろな負担が増えても、それは必要経費と考えればよいのです。
A子さん、B子さん、それぞれです。
これからの自分の夢を考えてみましょう。夢をかなえるために、今何をすればよいか考えてみると、働き方への答えもみつかるでしょう。
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