将来不安の中で存在感を増す準公的年金 【aunoeコラム転載 2014年 12月掲載】

本コラムは、2012年3月~2015年3月に「au one マネー」にて掲載された マイアドバイザー®連載コラムのバックナンバーになります。
週1回、合計4回で完結するスタイルのコラムを、今回の掲載では、4本分を一括で掲載しています。

今回のコラムの執筆者:小松英二

マイアドバイザー®/優益FPオフィス を通じて対応された業務の権利は、退会時に放棄されているため、マイアドバイザー®(運営者:株式会社優益FPオフィス)に帰属しています。

将来不安の中で存在感を増す準公的年金①

公的年金の財政事情が悪化の一途をたどっています。
厚生労働省が平成26年6月に公表した「公的年金の2014年財政検証」によりますと、30年後の年金は2割、3割といったレベルで削減しないと年金財政が持たないといった試算内容です。

公的年金を補完するため、株式投資や投資信託などによる私的年金作りも徐々に広がっています。「
貯蓄から投資へ」といったスローガンのもと、家計のリスク資産の保有も概して増加基調にあります。

しかしながら、リーマン・ショックなどで、リスク許容度を超えた相場変動で受けたダメージを引きずり、資産運用から手を引いた人も少なくありません。

このように公的年金を補う私的年金作りが思うように進まない中で、このところ両者の中間にある個人年金分野でいくつか動きが出ています。
たとえば、企業型確定拠出年金の拠出限度額の見直しの動きです。

政府は、定額(原則、月5万5千円)としている拠出限度額を年収に比例させるなど、制度の規模拡大の検討を進めており、充実した老後資金作りが期待されます。

今回は、公的年金でもなく、私的年金でもない、その中間に位置する「準公的年金」ともいえる分野の制度拡充の動きを見ていきましょう。

将来不安の中で存在感を増す準公的年金②

ここで用いている「準公的年金」は実は一般的な表現ではありません。
“税制上の優遇措置など公的サポートのある資産形成の枠組み”といった説明を付すと分かり易いかもしれません。
具体的に取り上げるのは、代表格としての確定拠出年金(以下DC。DC:Defined Contribution Plan)と注目のNISAです。

まず、DCから見ていきます。
DCは、現役時代に確定額を拠出し、年金受給者が投資商品を選択するなど自己責任で運用し、老後に年金か一時金として受け取る仕組みです。
企業型と個人型があり、企業型は導入企業が従業員のために掛け金を負担し、従業員も一定の条件のもと掛け金を拠出できます。
個人型は自営業者などが掛け金を負担し加入します。
加入制限から、公務員や専業主婦はいずれにも加入できません。

DCの最大のメリットは、税制上の優遇の多さです。

まず、拠出段階でメリットが受けられます。
加入者である個人が掛金を拠出する場合、毎月支払った掛け金はすべて所得から差し引けるので支払う税金は安くなります。

また、掛金の運用益に対する課税は行われないことから、有利な複利運用が可能となります。

さらに将来の受取段階でも一定額まで課税されない税制優遇があります。税制上は他に並ぶものがない有利な制度といえるでしょう。

将来不安の中で存在感を増す準公的年金③

第2回で見たとおりDCは通常の資産運用に比べますと税制面で圧倒的に有利です。

しかしながら、個人型DCに加入できるのに未加入の人が非常に多いことが指摘されています。
実に3,600万人もの人が加入できるのに実際の加入者は1%にも満たない15万人ほどにすぎません。
制度の認知度を高めていくことが課題といえるでしょう。

それとともに注目したいのは、個人型確定拠出年金の加入対象を広げる検討が始まったことです。
現在は自営業者と企業年金がまったくない企業の従業員が対象ですが、会社員の配偶者(第3号被保険者)や公務員にも門戸を開き、誰でも加入できるようにする案が浮上しています。

また第1回でも触れましたが、企業型確定拠出年金の拠出限度額の見直しの動きもあります。

政府は、
▼定額(原則、月5万5千円)としている拠出限度額を年収に比例させること
▼マッチング拠出と呼ばれる従業員拠出の上限ルールを増額方向で緩和させること
などの検討に着手したようです。

また、運用の自己責任重視の確定拠出年金(個人がリスクを負う)と、給付の安定重視の確定給付年金(企業がリスクを負う)といった2タイプを組み合わせたハイブリッド型の年金を模索する動きもあります。

将来不安の中で存在感を増す準公的年金④

続いてNISAを見ていきます。

NISAは平成26年1月にスタートした少額投資を優遇する税制です。
20歳以上ならだれでも開設できるNISA口座では、上場株式や株式投資信託などの配当や売却益について、一定の条件のもと、通常なら20%(このほかに、所得税額に2.1%の復興特別取得税が加算)かかる配当等への課税をしません。

一定の条件とは、①平成26年1月1日から平成35年12月31日までの10年間に非課税口座を開設すること、②毎年の新規投資額は100万円が上限であること、③新規投資の年から5年間を非課税期間とすることなどです。

NISAは利便性向上のために様々な改善事項が指摘され、金融庁を中心に検討が進められています。
平成27年度の税制改正大綱には、年間100万円といった非課税枠の増額(当面は120万円に引き上げる方向)や、世代間の金融資産の移転を促す狙いで、親や祖父母が未成年の子ども名義で投資が可能となる“子ども版NISA”(英国のジュニアISAがモデル)の創設などが盛り込まれる、とする報道が流れています。

ここまで準公的年金として2つの制度を見てきましたが、利用できる人は改めて加入を検討してみてください。

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