本コラムは、2012年3月~2015年3月に「au one マネー」にて掲載された マイアドバイザー®連載コラムのバックナンバーになります。
週1回、合計4回で完結するスタイルのコラムを、今回の掲載では、4本分を一括で掲載しています。
今回のコラムの執筆者:中村真佐子
マイアドバイザー®/優益FPオフィス を通じて対応された業務の権利は、退会時に放棄されているため、マイアドバイザー®(運営者:株式会社優益FPオフィス)に帰属しています。
教育ローンと奨学金の違い
大学、短大、専門学校等の進学率は79.7%となっており、高校卒業後も学業を選ぶ人が8割近くまでとなりました。教育費のピークも高校卒業後となり、その進路によっては家計に大きな負担となります。
高止まりしている教育費は、今後の消費税アップやインフレにより負担増が懸念され、やりくりに頭を悩ませている親御さんは少なくありません。
教育資金が足りなくなったときに、よく利用されているのが、「教育ローン」と「奨学金」です。
どちらもお金を借りることには変わりないですが、どちらを選べばよいのか?判断するためにライフプランから考えてみましょう。
教育ローンと奨学金の違い
「教育ローン」と「奨学金」の違いを簡単に言うと、
「教育ローン」は“親が返済する”もの
「奨学金」は“子どもが返済する”ものです。
教育ローンは、使う目的が限定されていることから、カードローン等と比べて金利は低いです。親の収入等の審査をして借り入れができます。
教育ローンは、民間金融機関のローンだけなく、国の教育ローンという公的ローンもあります。
それに対して、奨学金は、子どもの成績により金利負担が違います。親の年収も借りる際の条件となります。
子どもがお金を借りることになりますので、就職してからの返済になります。
「自立して学ぶことを支援する」のが奨学金の目的となっていますので、公的資金の投入することにより、収入の見込みが全く分からない学生でもお金を借りることができるのです。
次回は、子どものライフプランから考える教育ローンと奨学金を見ていきます。
子どものライフプランから考える
前回は、「奨学金」と「教育ローン」の違いに触れました。
今回は、子どものライフプランから考える教育ローンと奨学金です。
「奨学金」の給付を受けて大学に進学した場合は、卒業して就職した後、返済が始まります。
文部科学省の平成24年賃金構造基本統計調査結果によると、大卒の初任給は199,600円となっております。この分がすべて手取りになるわけではなく、税金や社会保険料が引かれます。手取り収入の中で奨学金を返済してかなければなりません。
例えば、有利息の奨学金毎月50,000円を4年間借りると総額240万円借りたことになります。これを、返済期間は15年、上限金利の3%で簡易計算すると毎月返済は16,769円(返済総額3,018,568円)となります。
22歳で卒業したとすると37歳まで返済を続けることとなりますから、結婚して子どもができても支払いを続けているケースも考えられます。
親元から働きに出ている場合は、生活費に余裕があるかもしれませんが、大学進学時に地方から首都圏に出てきてそのまま親元離れて就職した場合などは、収入に占める生活費の割合は多く、その中で奨学金を返済してくと、貯蓄をする余裕がなくなることもあるでしょう。
「教育ローン」の場合はどうでしょう。
親が返済するものですから、子どもの負担はありません。つまり、就職後のライフプランに直接影響はありません。
ただ、教育的観点から、就職後は、返済のうちのいくらかは負担してもらうことを親子で話し合うのもよいと考えます。
「就職時がライフプランの始まり」です。
将来の使うためのお金を働いて得たお金の中から貯めていくことが必要となってくることは親として考えなければなりません。
親のライフプランから考える
前回は、子どものライフプランからの選択を考えてみました。
今回は、親のライフプランから考えてみましょう。
親のライフプランに影響してくるのは「教育ローン」です。
20代後半から30代後半にかけて出産した子どもが大学進学をするのは、40代後半から50代前半。
この時期は、子育てを卒業と同時に老後資金を準備する期間でもあります。
住宅ローンをかかえている場合は、この時期も返済が続いていることが想定されます。
そこに教育ローンという新たな借金が加わることになります。
「奨学金」は、子どもが返済するのだから、親のライフプランに影響しないように思われますが、そうでないケースも考えられます。
親が奨学金の保証人になれば、子どもが返済困難になった場合に代わりに返済することになります。
日本学生支援機構の調べによると、奨学金滞納の理由は、子どもの収入減についで2番目に親の収入減となっています。
老後資金を準備しつつも、教育ローンを返済するには、固定金利型の教育ローンを選択すると計画が立てやすいです。
国の教育ローンは、固定金利で金利が低く(2014年11月現在2.25%)金利情勢によっては、奨学金よりも金利が低くなる可能性もあります。(奨学金の金利は貸与が修了する時点で確定するので4年制大学の場合は最大4年返済先送り。ただし上限金利は3%)
前回も触れましたが、子どもにもいくらかの返済負担を担ってもらえれば、なおのことよいでしょう。
子どもの就職がポイント
子どもと親のライフプランの視点から、「教育ローン」と「奨学金」を見てきました。
破たんすることなく、親子ともにライフプランを実現するには、子どもの就職が大きなポイントとなります。
就職は、その時期の経済状況が大きく影響します。また、正社員になれないケースもあるでしょうし、めでたく就職できたとしても続かないこともあるでしょう。
ただ、奨学金か教育ローンかを選択する大学入学時に将来の就職を想定することは難しいでしょう。
では、どちらを選択すればよいのでしょう。
これまで見てきたように、教育ローンだけでなく、奨学金も親のライフプランに影響することが考えられます。
奨学金は子どもライフプランにも影響を及ぼし、ライフプランからみると奨学金は親子双方に影響を及ぼします。
奨学金は、返済が4年制大学の場合、最大4年先送りとなるため、上限はあるにせよ金利上昇リスクがあります。公的資金が投入されて成り立っている奨学金は、財政の状況によっては将来見直しされる局面もあるかもしれません。リスクの面を考え共倒れを防ぐためには、教育ローンの選択となります。
大学入学時は、お金のこと、将来のことを親子で話し合える時期でもあります。
将来のライフプランを語り合い、親子共通認識で出した答えに、間違いはありません。
「ひとりで自立して生きていくための最後の学びは、とても大切なもの」です。
お金のありがたみに感謝しつつ、有効に使うことを親子でしっかり話し合いましょう。
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