【2008年 第3回 「他人の家計」ってやっぱり気になります?…金融世論調査の結果から】地域コラム 近畿
高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール
先月末、金融広報中央委員会が2007年の「家計の金融行動に関する世論調査」の結果を発表しました。
この結果については、新聞やニュースなどでも報道されましたので、ご存じの方も多いかと思います。
「よそのお宅の家計や資産って、どうなってるのかしら…」というギモンは、多かれ少なかれ皆さんの中にあるのではないでしょうか。
情報収集の上手な主婦であっても、コレはさすがに“井戸端会議”の話題には上りにくいもの。
かといって、親しい友人に尋ねるのも気が引けますよね。
そうなると、こういった大々的に行われる調査の結果というのは、自分の家計と比べてみるよいきっかけになりそうです。
では、この調査の結果を見てみましょう。
まずは、「金融資産の平均保有額」。
全世帯の平均額をみると、2人以上世帯では1259万円、単身世帯では724万円。
貯蓄を保有している世帯のみの平均額をみると、2人以上世帯では1624万円、単身世帯では1035万円。
どうでしょうか。この数字だけからだと、「エ~ッ!そんなにあるの~」と、実態とは違う印象を持つかもしれません。
それは、“平均”のマジックのせい。“平均”は、「平らにならした値」としてよく用いられます。
が、その数値はかならずしも「ふつう」を表しているとは限らないのです。
特に、データの中に極端な値がある場合、平均値の実用性はかなり落ちてしまいます。
例えば、10世帯のうち9世帯が100万円を持っていて、残りの1世帯が1億円を持っている場合、平均値は1090万円になってしまうのです。
9世帯にとっては、1090万円が「ふつう」と言われてもチョット納得がいかないでしょう。
今回の調査対象は、20歳以上70歳未満なので、少数の高額資産を保有する世帯の存在によって、大幅に引っ張られているとも考えられます。
実際、貯蓄保有世帯の約7割が、平均値を下回る保有額となっているので、「エ~ッ!そんなに高いの?」と思う人が多いのも当然ですね。
(ちなみに、2人以上世帯の場合、貯蓄ゼロ世帯は全体の20.6%。その一方、1億円以上を持っている世帯は全体の0.8%。この層が、平均値をググッと引き上げたということになります。)
そこで平均値の持つ欠点を補うために登場するのが「中央値」です。
この「中央値」はとってもカンタン!単純に、調査対象世帯の保有額を順に並べるだけです。
ちょうど真ん中に位置する世帯の保有額を「中央値」と呼びます。
では、もう一度調査結果に戻って「金融資産の中央値」を見てみましょう。
全世帯の中央値は、2人以上世帯では500万円、単身世帯では100万円。
貯蓄を保有している世帯のみの中央値は、2人以上世帯では892万円、単身世帯では300万円となっています。
これならどうですか。
「“ふつう”の家計でコレくらいの貯蓄なのね…」という私たちの実感に近づいたのではないでしょうか。
さて、実は、この調査。今回から名前も内容も変更されて実施されました。
1つは、「2人以上世帯」と「単身世帯」の調査を区分し、別調査として集計・公表されたこと。こうすることで、上記の貯蓄額についてもより実態がわかりやすくなりました。
もう1つは、設問が一部追加されたこと。名称を「家計の金融資産に関する世論調査」から「家計の金融行動に関する世論調査」と変えたことからもわかるように、資産そのものの状態だけではなく、家計に対してどのような考え方でどのように動いたかを探ろうという試みがうかがえます。
この追加された設問と結果について、私が気になったのは「家計バランスの評価」です。実際の質問と回答割合を以下に示します。
【質問】あなたの現在の家計全体のバランスについて、以下の中から最も近いものをお選び下さい。(○は1つ)
(1) 住宅ローン等の借入れに比べ、資産(持家および金融資産等)の総額は時価で見て大きいので、資産と負債のバランスにはゆとりがある。<2人以上世帯5.1%、単身世帯6.5%>
(2) 住宅ローン等の借入れがあるものの、資産(持家および金融資産等)の総額も時価で見てそこそこあるので、資産と負債のバランスについて不安はない。
<2人以上世帯10.2%、単身世帯5.8%>
(3) 住宅ローン等の借入れに比べ、資産(持家および金融資産等)の総額は時価で見て小さく、資産と負債のバランスに不安を抱えている。
<2人以上世帯15.9%、単身世帯10.1%>
(4) 資産と負債のバランスについては、意識したことがない。
<2人以上世帯62.6%、単身世帯77.6%>
私が大変問題であると感じたのは、「資産と負債のバランスについて意識したことがない」という世帯の多さです。
「意識したことがない」ということは、ゆとりがあるのか不安があるのかも考えたことがないということで、それはとても危険なことだと思います。
この調査結果の項目も、「Ⅰ金融資産の状況」「Ⅱ借入金の状況」となっています。
貯蓄というプラス面と借金というマイナス面の両方をバランスさせて考えてはじめて、家計の正しい状況が見えてきます。
もしも、あなたが「資産と負債のバランス」について考えたことがないというのであれば、ぜひとも、総合的な視点から家計を見わたしてみることをお勧めします。
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