【金銭教育その1】「子ども」と「刃物」と「おこづかい」【2008年 第7回】

【2008年 第7回 【金銭教育その1】「子ども」と「刃物」と「おこづかい」】地域コラム 近畿

高原 育代(タカハラ ヤスヨ)⇒ プロフィール

 

 

 

 

 

 

FPとして私が取り組んでいるテーマの一つが「金銭教育」です。
私自身が、日々成長しつつある子どもとの生活の中で、「子ども」と「お金」の問題についていろんな疑問や悩みを持つところからスタートした活動です。
うまくいったな~と満足できることもありますが、もちろん失敗もたくさんあって、日々試行錯誤しながらまだまだ現在進行形です。

「金銭教育」というのは、実は、子どもに対してだけの問題ではなく、人が生きている限り一生続く「ライフプランニング」に関わる大きなテーマだと私は考えています。
だからこそ、FPであり母親である私がライフワークとして、これまでもそしてこれからも、取り組んでいきたいと思っているのです。

このコラムの中で、そんな日々の気づきや経験を書きつづっていこうと思います。

「子ども」と「お金」というのは、一昔前まではあまり縁のない組み合わせだったものかもしれません。
ところがこの10年ほどの間に、インターネットや携帯電話など、親の世代にはなかった新しいツールが急速に発展したこともあって、子どもたちを取り巻く状況が一変しています。

子育て中の親の立場にいる私たちは、いろんな場面で「子ども」と「お金」の問題に対して疑問を感じたり、実際に困ったり、どうしたらよいのかとあせったりする場面をほとんどの人が経験していると思います。
ところが、日頃仲良しの母親どうしでも意外と話題になりにくいテーマでもあり、かといって学校のPTAのような場でも取り上げられにくいのもまた事実。
それは、「お金」の問題が、各家庭の事情つまりプライバシーに関わる問題でもあるからだといえるでしょう。

こんなふうに、共通した場で取り上げられにくい話題について、野村證券が定期的に実施している調査は、非常に興味深いものがあります。その一部をご紹介しましょう。

◎ 第4回 家庭での経済教育に関する調査
https://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/nsc/20071126/20071126_a.pdf

● 将来のために子どもにお金や経済の知識が必要性だと感じているか?
「かなり必要だ…35.0%」「まあまあ必要だ…58.5%」ということで、必要だと考えている人の割合は9割超。

● 子どもとお金や経済についての話をしているか?
「頻繁に話している…8.1%」「たまに話している…55.4%」ということで、話している人の割合は6割超。

● 今後、お金や経済にかかわる事柄について、子どもと話していきたいと思っているか?
「ひんぱんに話していきたい…18.0%」「たまには話していきたい…75.9%」ということで、今後は話していきたいと思っている人の割合は9割超。

この調査によれば、理想と実態とでは約30ポイントの差があるという結果が出ています。つまり、家庭でお金の話をする必要性を感じ、また話していきたいと思っている人がほとんどであるのに、実際には話せていない人もまだまだ…が現状なのです。

だからといって、ここで「みんなそうなんだ」と安心してもらっては困ります。
激変する社会を生きていくこどもたちを守るために大切なのは、まず「お金の話をすること」。
これがスタートだと私は思っています。

でも、「何をどんなふうに話せばいいのかわからない」そうおっしゃる方も多いでしょう。
そういう方へのちょっとしたヒントを7月3日付の朝日新聞天声人語の中からご紹介しましょう。

長野県池田町の会染小学校では、入学すると、折り畳みナイフの「肥後守」をみんながもらうのだそうです。
筆箱に入れて鉛筆を削り、工作に使い、また手入れも怠らないのだそう。
この学校ではこどもたちに「いつも刃物を持たせる」のです。
校長先生は「教えることは教えて、あとは子どもを信頼します」とおっしゃっています。

その一方で、先般、秋葉原で起きた悲惨な殺傷事件を受けて、刃物をめぐる議論が盛んになっています。
朝日新聞の投書欄にも、「刃物の使い方を学校で教えて」という意見もあれば「何でも学校に求めないで」という学校現場の先生からの反論も届いているそうです。

私はここでふと思いました。
この「子どもと刃物」の議論は、実は「子どもとお金」において問題になることと同じではないだろうか、と。
「刃物」を「お金」に置き換えて考えてみたらどうだろう、と。

「刃物」も「お金」も、生きていく上で使わずに済ますことのできない重要な“道具”です。
しかも、使い方を誤ると痛い目にあう“道具”でもあります。
ということは、“正しい使い方”を学ぶ必要があるはずです。では、どこで?ダレから?

この会染小学校では、「いつも刃物を持たせる」ことで、“道具”として使いこなすことを日々の生活の中で身につけさせようとしているのです。
そして“子どもを信頼する”…。とても理想的なことです。

「お金」についても、こういう場を学校に求める親は多いかもしれません。
でも、「刃物」という、子どもが使う用途が限定的な道具ですら、会染小学校のような例は珍しいのです。
まして、「お金」に関してそういう理想を学校に求めるのは非現実的と言わざるを得ないでしょう。
そうなると、こどもたちを守るためには、やはり『家庭』が重大な役目を果たさなくてはならないということになるのです。

「お金」というのは、大人にとってもうまく使いこなすことが難しい側面を持っています。
それをどうやって家庭で子どもに教えていったらいいのか?

そこで、力を発揮するのが『こづかい』なのです。
「刃物をいつも持たせる」ことで日々の生活の中で身につけさせようとするのと同様、『こづかい』を活用すれば、「お金をいつも身近に感じさせる」ために大きな効果をあげることができるのです。
そして、「教えることは教えて、あとは子どもを信頼する」という状態にしていくことも『こづかい』の活用によって可能なのです。

次回からのコラムの中で、『こづかい』についての具体的な話をとりあげていきたいと思います。

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