今日もIt’s書!④~ 人生に通じる値動き感覚・マーケットの波に乗ろう!【2008年 第4回】

【2008年 第4回 今日もIt’s書!④~ 人生に通じる値動き感覚・マーケットの波に乗ろう!】地域コラム 九州・沖縄

平川 すみこ(ヒラカワ スミコ)⇒ プロフィール

 

 

金融の世界というのは、実体がないだけに、なじみがないとわかりにくいものです。
慣れない金融用語にワカリニクイしくみ。そして最近のマーケットはデリバティブ、オプション、先物といったもので益々複雑怪奇にゲーム性を帯びた様相を呈しています。
でも、知ってしまうとおもしろいのも金融経済。
FPや証券外務員の資格講座で初めて金融を勉強される方にも“読んでみるとおもしろくて知識が深まるよ!”と、紹介している経済関係の本の中から、今月は株式投資について学べる小説をご紹介します。

<世界がまるで変わってしまう1日がある>
こんな書き出しから始まって、マーケットという大きな波のうねりの中で奮闘し、成長していく若者の姿を描いた作品です。
いつの間にか、主人公とともに、その波のうねりを体感しながら株式投資のダイナミズムと醍醐味に引き込まれていきます。

本書は、2002年に放送されたTOKIOの長瀬クン主演の連続ドラマ『ビックマネー』の原作。
長瀬クン演じる主人公・白戸則道が、パソコンが何台も並ぶ謎の老人投資家・小塚(植木等さん)の家で、でっかいグラフに手書きで株価チャートを書き込んでいる姿が印象的でした。
当時はまだ、私自身株式投資などやってなかったけれど、FPの勉強で金融経済を勉強していた頃なので、すごく興味深く毎週ドラマに観入っていた思い出があります。

いつか原作を読んでみたいと思いつつ、そう思ってたことすらすっかり忘れていたのですが、あるマネー関連のHPでおすすめ書籍をたまたま見てみたら、紹介されていた一冊。
ドラマの原作だとは書かれていませんでしたが、紹介文ですぐにピーン!ときました。

ドラマではかなりアレンジされていて、原作には登場しない敵役・まつば銀行のディーラーとの駆け引きなどもありましたっけ。
そのディーラーを演じていたのは、ネプチューンの原田泰造さん。
俳優としては初出演だったと思うのですが、とてもお笑い芸人とは思えない演技力もまた見所のひとつでした。

原作はそういったドラマチックな展開もさることながら、息を呑むマーケットの動きも、当然ながら文字だけでしか表現されていません。
株式投資経験がないと、何のことを言ってるのかよくわからない相場の状況のはずですが、まったくの素人だった主人公(でも、天性の才があるという筋書きですが)と同じように臨場感を体感できてしまうのです。さすが石田衣良!!

マーケットってこんなに面白いのか。
揺れ動く数字の波に感覚を研ぎ澄ましていくってこんな感じなのか。

もちろん、私には、金融になじんできた今でもそんな値動き感覚のある売買ができるとは到底思ってなんかいないのですが、いつしか本の世界に引き込まれて、主人公と一緒に大きな波を乗りこなしている自分がいます。

そして、“値動き感覚というのはなにも経済に限ったことではない”、と主人公が魔術師と呼ぶ小塚老人は語ります。
“私たちの人生にも細かな波の上下と潮目のうねりがあって、それを感じとれるように感覚を磨くことも悪くない・・・”と。

数字の動きからマーケットの動きを捉える感覚、それはある意味、人生においてチャンスをつかんだり、撤退できるタイミングをとらえる感覚と通じているのかもしれません。
こういう感覚ってやっぱり鈍っていちゃダメっていうことですよね。

物語の終盤は、高齢者に住宅担保に融資をし、変額保険を一時払い契約させ、担保価値が下がったら売却してでも返済させる、という悪事を横行していたまつば銀行を陥れるために、主人公と小塚老人仕掛ける一大ディールに息を呑みます。

ここで、「風説の流布」だとか「インサイダー取引」、「相場操縦取引」といった、株取引では違反とされるものが駆使され、影の部分が露呈されていきます。
最後には正義が勝つのか。否。主人公は証券取引法違反で逮捕されてしまいます。

読む方にはなんともやるせない読後感ですが、違反行為がどういったものか学ぶことができ、株式投資には常に冷静な判断、目に見えない取引相手の心理や作戦も読むといった感覚の必要性に気づかされます。

みなさんも、この本を通じて、株式投資を学ぶとともに、人生にも必要な値動き感覚を磨いてみませんか?

『波の上の魔術師』(石田衣良著、文春文庫)
本の紹介URL:http://www.bk1.jp/product/235810

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