【2008年 第2回 高学歴ワーキングプアの出現?どう対処すればよいのでしょう】地域コラム 九州・沖縄
西谷 由美子(ニシタニ ユミコ)⇒ プロフィール
先日、首都圏では雪が降りました。九州はそこまで冷え込みませんでしたが、ちょうどセンター試験の翌日。大きな混乱もなく、受験生の方はホっとしたことでしょう。受験シーズン真っ盛り。うちにも高校受験の最中の娘がおりまして、他人事とは思えませんでした。
このような時節柄、教育費について考える方が多いのではないかと思います。中学、高校、そして大学、エトセトラ・・・少子化の進行もありますが、できるだけのことをしてあげたいと思うのが親心。国民生活金融公庫や文科省の調査(07年に実施)によりますと、大学や大学院での学費も年々上昇しているそうです。
さて、ここで気になる数字があります。一般人から見れば雲の上の存在、大学院出の「博士様」の就職率が、な、なんと50%を割りそうで、2人に1人は失業者???
ご自身も大学院博士課程を修了し、現在は僧侶でいらっしゃる水月昭道氏の著書「高学歴ワーキングプア」。もう読まれた方はいらっしゃいますか。
以下はその本より気になる部分の抜粋です。
「・・・現在博士号を取得しながらフリーターになっている数は1万2千人以上のところに毎年5千人規模で博士卒(博士号取得者)が出現。
大学院博士課程で単位取得後は大学や研究機関の専任教員となるのが順当な道筋だが、専任教員の募集に対しては倍率80倍などの応募殺到になることも。採用まではxx大学研究員の肩書きを持ち(学会に所属し発表をする等の実績が必要)、アルバイトで生活費を稼ぐ。研究員を名乗るためには受ける講義がなくても学費を払う必要がある。
この背景には文部科学省が91年に打ち出した「大学院重点化計画」の存在が。
それ以前は大学院生の数は修士課程も含めて約7万人。この時でも博士号取得後に就職できない問題があったのが、在学者数は26万人に増加。しかし少子化の影響もあり、大学・短大の進学者数は04年がピークで今はそれより9万人も減少、大学教員の採用数が増加するのは望み薄。しかも専任教員より非常勤講師が授業を担当する例が増えている。・・・」
極端ですが、著書の中には、大学教授や研究員への夢をあきらめ、パチプロになった、ネットカフェ難民に、などという例も。知らない間に社会構造が変わっていたんですよね、でも、私のアタマの中は古い常識のまま。隣で働くパートさんが、「博士」だったとき、普通に付き合えるかなぁ。なんかひいちゃいそう。で、その人正直に申告しないと経歴詐称?
正社員で生涯年収3億円、フリーターなら7千万円などといわれています。
高等教育機関に進むのは、中学や高校のように親からの強制等ではなく、自ら望んでのことでしょう。だからといって、簡単に「自己責任」といえそうにはありません。
冷徹に「費用対効果」という点から見ても生活も出来ないというのでは・・・「人生の価値はお金では測れない」、「地道な基礎研究が科学の発展に貢献する」。
響きはよく、正しそうですが、人は霞を食って生きていくわけでもありません。もし身近で「大学院で学問を究めたい」という例が出現したら、私はどう答えればよいのでしょう。その答えはまだみつかっていません。
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