実施まぢかの裁判員制度。勇気を持って「有罪」といえますか?【2008年 第3回】

【2008年 第3回 実施まぢかの裁判員制度。勇気を持って「有罪」といえますか?】地域コラム 九州・沖縄

西谷 由美子(ニシタニ ユミコ)⇒ プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ2008年が始まったばかりですが、え~と、2009年に株券の電子化でしょ、2011年にTV地上波放送の終了でしょ、色々と身の回りで新しい事が始まります。そのうちの一つに2009年5月からの裁判員制度があります。

一般の国民が参加することにより裁判がより身近となり、更には司法への信頼向上も図られるというのが実施の理由。確かに飲酒轢逃げ事故などは、判決や量刑が世間の常識に照らすと「どうかなぁ」という場合がありますよね。

米国の陪審員制度は有名ですが、日本で実施されるのはドイツなどのヨーロッパに近い形。有罪か無罪かを決定し、有罪の場合は刑の重さも裁判官と共に決定するというもので、国民から選ばれた6名の裁判員が3名の裁判官と共に裁判に携わります。

対象となっているのは強盗、殺人、放火などの重大な刑事事件の第一審。地方裁判所で行われるもので民事や軽微な刑事事件、上訴審は範囲外。色々な意見のある新制度ですが、金銭面も含めてみていきたいと思います。

まず一定数の裁判員候補が有権者名簿から抽選で選ばれます(この名簿は1年間有効)。対象となる裁判が行われる時、この名簿から更に抽選で候補者が絞り込まれ、実際に裁判員となる方及び補充のための裁判員が裁判所で行われる面接により選出されます。日本国籍を持つ20歳以上の方なら皆、候補者となる可能性が。

裁判員に選出されても「仕事休めないよ!」、「小さい子供がいるけど?」。様々な理由がおありでしょうが、辞退できる主な理由は70歳以上と高齢である場合、学生、ご本人が病気なのは勿論、家族に幼児・介護が必要な方がいらっしゃる場合、冠婚葬祭がその時期にある方、他にはどうしても仕事が休めない方など。但し、程度により辞退不可と判断される事もあるそうで、仕事は他の人と替われない重要なものに限られます。

最高裁や法務省のHPに色々具体例が出てましたが、気になったのは裁判所に「託児所を設ける予定はない」こと。一人で子育てしているママが辞退を希望する場合はちゃんと外してくれるんでしょうね。自腹でベビーシッター?でも一応日当、交通費は出ます。米国と違い、仕事が終わったら帰宅は可能。遠い場合は宿泊費も支給されます。

 

 

早くも振り込め詐欺の一種で「裁判員になったので保証金を振り込んで」という犯罪も起こっているそう。絶対そのような事はありませんのでご注意。但し勝手に辞退、つまり候補選出時や裁判時の呼び出しを無視しちゃうと10万円以下ですが、過料を課せられてしまいます。また、裁判に関わる「協議の秘密」や「プライバシーに関する事」は原則裁判後も守秘義務があり、違反の場合は懲役または罰金刑。体験記を書いてベストセラーというのは制限されそう。

2007年に内閣府が行ったアンケートでは「責任の重さが不安」、「参加に消極的な人の割合が80%弱」等、気になる結果が出ています。確かに突然選任されても躊躇しそう。新制度に疑問を呈する人の中には、「精力的に仕事をしている人は参加しにくく、時間的余裕のある人や日当が目当ての人、また特定の考え方を持って積極的に裁判に関わりたい人がより裁判員になりやすい傾向があり、幅広い国民の参加といえないのではないか。」という意見もあります。

もちろん三審制のわが国のこと、裁判員となって「死刑」判決に関わっても、最高裁等で結論が変わる場合もあるでしょう。けれど日常生活で思わず「死んでしまえ」などと口にした経験がある方も「地球より重い」、「お金では測れない」といわれる生命に関する判断を迫られる機会に直面するかもしれません。国民の義務、とはいえ、重たい課題ですね。

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