【2008年 第8回 えっ?パン1斤が100億!今ここに在るハイパーインフレの国】地域コラム 九州・沖縄
西谷 由美子(ニシタニ ユミコ)⇒ プロフィール
8月よりまたガソリン、食品類、さらには電気料金も値上げ。「お給料は上がらないのにますます生活が圧迫される」、と感じる今日この頃ではないでしょうか。ちょっと前まで不景気でデフレ、デフレ、大変だ・・・だったのが、不景気なのに物価が上昇で大変だ!になりつつあります。
物価の上昇を計る指標の1つに総務省が発表する「消費者物価指数」があるのはご存知でしょう。「全国の世帯が購入する家計に係る財およびサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列的に測定するもの(総務省)」で、毎月作成されています。
現在発表されている平成20年6月分では、19年の6月に比べると総合では2.0%、生鮮食品を除く総合1.9%、食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合0.1%の上昇だそう。なるほど、原油高、バイオエタノール増産が原因で食品関係の価格高騰、だけど家電製品などは技術の進歩で価格低下と言われる状況が反映されている感じ。
生活実感としてお給料は上がらないのに食品価格が上昇というのは嫌ですね。物価が継続して上昇していくのは「インフレーション」と呼ばれます。皆が相応のお金を持っているのに対して品物が不足(需要が供給を上回る状態)すると物価が上昇しますが、その上昇速度によって以下のような分類がなされています。
「1000%を超えるようなハイパーインフレが、第一次大戦後のドイツで起こった。」昔学校で先生が言ってたの覚えてます?実感がわかない、現実離れしている・・・ところが、21世紀の地球上でも現実に起こってるんです。その国はアフリカのジンバブエ。昨年末のインフレ率は年換算6万%、さらに上昇して今年の6月には年換算なんと16万%!パン1斤が100億ジンバブエドル(1億ジンバブエドル≒1円)、お買い物には荷車にお札を積んでいく状態だそうです。
イギリスよりローデシアとして独立したジンバブエはもともと豊かな農業国でした。しかし、黒人指導者のロバート・ムガベ氏が首相から大統領に就任するうちに、白人農場主から農地を強制収用、政財界ではムガベ支持者が私腹を肥やしていきます。白人が退去した国では産業が壊滅的な打撃を受け、生活用品のみならず農産物も欠乏。総てが品不足でこのような状態が続いているとの事です。更には今年3月の総選挙、ムガベ大統領の対立候補はみな次々と弾圧されてしまいます。このような状況に対して洞爺湖サミットで、G8外相が特別声明で懸念を表明したのは記憶に新しい所でしょう。
豊かな国に生まれた私たちには、今の日本の状況は辛いものですが、広い世界にはもっと困難に直面した人々がいる訳ですよね。確かに経済の舵取りというのは難しいものでしょう。けれど、上記の圧制・失政のジンバブエに比べれば、わが日本は自由と民主主義の国、失政は主権者である国民による選挙の洗礼を受けます。また、狭い国土でも世界に通用する匠の技、勤勉な国民性だってあります。アラジンの「陽はまた昇る」のノリで、何とかこの難局を乗り切りたいものですよね。
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