震災と社会保険【2011年 第4回】

【2011年 第4回】 震災と社会保険 ~社会保険(労働保険)~

菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール

被災された方への特例措置 東北地方太平洋沖地震で被災された皆様にお見舞い申し上げます。
厚生労働省からは、社会保険や労働保険に関する特例措置が出されています。
4月1日現在での情報をまとめてみましたので、少しでもお役に立てばと思います。

 

災害から時間が経過するにつれ、今後の生活再建が重要になってきます。
お勤め先も被害を受け、休業を余議なくされている方からの不安な声が報道されています。

災害時の失業給付

特例により、実際に離職していなくても、災害により事業が休止・廃止した場合は、雇用保険から失業給付を受給できるようになっています。復旧すれば再雇用が予定されている場合でも受給できます。
ただし、雇用保険の加入期間が6か月以上あるなど、条件を満たしている方のみです。

現在失業給付を受けている方で、指定された日にハローワークへ行けない、また避難しているために、いつものハローワークへ行くことができないなどの場合は、認定日を変更することも可能です。避難先でのハローワークで手続きすることもできます。

雇用されている方ばかりではなく、経営者の方も、会社や工場など施設が被害を受け、お困りになっています。
会社の都合で、労働者を休業させる場合は、通常は休業手当(平均賃金の6割)を支給しなくてはなりませんが、今回のような自然災害は、原則として休業手当の支払い義務はありません。(支払わなくてはならないケースもありますので、確認が必要です。)

地震等で直接被害を受けた会社からは休業手当が支給されないと考えて、該当する方は、当面の生活資金として失業給付の利用を検討してください。
いずれも詳しいことはハローワークで相談してください。

労災認定による給付

今回、被災された方の中には、仕事中や通勤途中であった方もたくさんいらっしゃいます。自然災害によるものは労災認定されないこともありますが、今回の災害は、労災として補償を受けることができます。地震や津波で建物が倒壊するという危険な環境下で仕事をしていたと認められるからです。

出張中に地震や津波に遭い被災したという場合も、私的な行為中を除いて労災による補償が受けられます。外回りの営業に出ていて被災したという場合も、明らかに私的な行為中でない限り、業務災害として、労災保険による給付が受けられます。

業務災害の場合は、病院での治療に自己負担はありませんし、ケガなどのために仕事に就けない状態であれば、休業補償を受けられます。

労災保険による治療を受ける場合、通常は、所定の様式を医療機関に提出しなければなりませんが、事業主の証明がなくて受診できるように弾力的な運用がされています。相談先は労働基準監督署です。

保健証がなくても受診可能

業務中や通勤途上でない場合は、医療保険でけがや病気の治療を受けますが、保険証がないなどでお困りの方も多いです。震災後、すぐに通達が出されていまし たが、地震による被災のために保険者証がなく、医療機関等を受診する場合、医療機関の窓口で「氏名」「生年月日」「事業所名」を申し出れば、保険証を提示することなく受診できます。
医療機関を受診する際の一部負担金等の免除もありますので、該当する方については、 一部負担金等の窓口負担を医療機関で支払う必要はありません。(当面5月末まで)

保険証の再発行は、お勤めの方は、通常、事業所を経由して申請します。ただし、会社が被害を受け、事業所経由が困難な場合、本人が直接協会けんぽへ申請すると、本人へ保険証が交付されます。
また、健康保険の任意継続をしておられる方は、毎月10日までに保険料を納付しなければなりませんが、当面、平成23年5月末日を限度として納付期限が延長されています。協会けんぽへ連絡してください。

国民年金へ加入されている方は、災害のため保険料を納付できないこともあるでしょう。この場合は、免除制度を利用できます。

以上、社会保険・労災保険関係に限って特例措置などをまとめてみましたが、もっと多くの支援策が必要でしょう。被災された方を真に救済できる支援策をのぞんでやみません。

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