【2011年 第10回】パートタイマーと社会保険 ~社会保険(労働保険)~
菅野 美和子(スガノ ミワコ) ⇒プロフィール
パートタイマーの厚生年金加入はどうなる?パートタイマーの厚生年金加入や専業主婦(夫)の年金について、厚生労働省は検討に入っています。
現在、扶養家族となっている人たちにとっては気になるところですね。
パートタイマーと厚生年金(健康保険も含めて)加入については、誤解も多いものです。
それでは、パートタイマーと厚生年金加入についてお話ししていきます。
パートタイムの厚生年金加入基準
パートタイマーの厚生年金(健康保険も含めて、以下同じ)加入基準は、いわゆる「一般社員の4分の3」基準によります。
4分の3基準とは、労働時間と労働日数が、それぞれ一般社員の4分の3以上であるときは、厚生年金に加入しなければならないということです。
労働時間については、一般社員が1日8時間働いている場合は、6時間働くと該当します。
日によって労働時間が変わる場合は、1週間・1ヵ月平均などで確認します。
労働日数については、1ヵ月の勤務日数が一般社員通常出勤する日数の4分の3以上あれば該当します。一般社員が1ヵ月に20日勤務であれば、その4分の3は15日です。
しかしながら、この基準は「おおむね4分の3」となっています。雇用保険の加入基準のように週20時間以上というラインがはっきりしていませんので、なんともわかりにくいことになっています。
4分の3以下であっても、総合的に判断され、厚生年金に加入しなければならない場合もあります。
気をつけないといけないのは、加入基準に、収入は関係ないということです。
130万円未満だから社会保険に加入しなくてもよいと思っている人も多いのですが、130万円未満という条件は、第3号被保険者(健康保険の扶養家族)になれる条件です。
たとえ、130万円未満の収入であっても、働く時間や日数が4分の3基準に該当していると、厚生保険に加入しなければなりません。
また、「私は60歳を過ぎているし、年金をもらっているので関係ない!」という人もありますが、それは違います。厚生年金加入は70歳未満の人が対象です。
パートタイマーの加入もれは問題となっていて、現在、年金事務所は調査をすすめています。
厚生年金加入にメリットがある?
それでは厚生年金加入にメリットはあるのでしょうか。
厚生年金加入のメリットとしては、受け取る年金が増えること。
第3号被保険者期間は老齢基礎年金のみですが、厚生年金に加入することによって上乗せ年金が増えます。
すてに年金を受け取っている人も退職時などに年金額が増えますよ。
厚生年金加入のデメリット
ただし、厚生年金加入がメリットばかりとも限りません。
万が一、夫が死亡して遺族年金を受け取るようになれば、自分自身の年金と両方もらえません。年金額の多い夫の遺族年金を選択した場合、何のために厚生年金に加入したのかと思いたくなることもあります。
また、自分自身の厚生年金加入期間が長くなることによって、夫婦の特典(加給年金や振替加算)がなくなってしまうという問題も生じてきます。
しかし、そのために、今の働き方を調整するのがプラスになるのかどうか?
未来はわからないからこそ、自分のために、年金を増やしておくという選択があってもよいのではないかと思います。
年末が近づいて、130万円を超えないように、収入調整する人も増えています。
しかし、所得税の103万円とは異なりますので、今年130万円未満に調整しても扶養からはずれることもありますし、勤め先で社会保険に加入しなければならないこともあります。
収入調整が無駄になる場合もあります。
自分の条件で確認を
再度、「まわりから聞いた話」ではなく、「自分の条件」で確認することをおすすめします。
現在、厚生労働省は、パートの加入基準を下げる案、第3号被保険者の見直し案などを検討していますが、サラリーマンや公務員世帯の専業主婦が、夫が支払う厚生年金などの保険料の半分を払ったとみなし、夫が受け取る厚生年金などの受給額の半分を妻の基礎年金に上乗せする仕組みで検討に入っています。
これは離婚時の年金分割と同じ方法です。私としては、問題の解決にならないように感じます。見直し案の方向性に注目していきましょう
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