【2011年 第12回 】確定申告その前に ~金融商品の仕組み~
鈴木 暁子(スズキアキコ)⇒ プロフィール
今年も震災や欧州金融不安などで、落ち着かない市場でした。
収益をあげた人も、損失を被った人も、年明けには確定申告がありますが、今回はそれにちなんで活用することが多い特例や、誤解の多い事例などをご紹介します。
1)複数口座の損益通算
「特定口座源泉徴収あり」で複数の証券会社に口座を保有している場合、確定申告することで、収益があがって源泉徴収されている口座と損失を被った口座の損益通算をすることができます。それによって収益の圧縮が可能となり源泉徴収された税金の一部あるいは全部を還付できるのです。
2)譲渡損失の繰越
年間の取引で損失がある人は、損失の繰越を行うことで当年の損失を3年間繰り越せます。(この特例を使えることは決して嬉しいことではありませんが)
3年以内に繰り越す損失が無くなればそこまで、また3年で消化しきれなかった損失は諦めることになりますが、その間収益が出ても損益通算して収益を圧縮することが可能です。
ただし、繰り越す際は(この特例を使ったか否かにかかわらず)毎年申請が必要ですので注意してください。
上記2ケースとも、損失があるのに儲かった分は普通に税金を納めるのはもったいないですよね。特に今は損失を被っているケースも多いと思いますので、活用しない手はありません。
源泉徴収ありの口座であれば年間取引の収支計算と源泉徴収まで完了するため、原則確定申告の必要がありませんが、損失があり税金の還付を受けるには確定申告が必要です。源泉徴収口座を保有している人も、特例や確定申告の知識は勉強しておくべきでしょう。
3)投資信託の特別分配金
「年間報告書を見たら、投資信託の特別分配金があるのに、源泉徴収されていない」とよく質問をいただくのですが、これはちょっと勉強不足ですね。
投資信託の分配金には「普通分配金」と「特別分配金」がありますが、分配落ち後の基準価額が個別元本を上回っている場合は、その分配金は収益であるため課税対象となります。これを「普通分配金」といいます。
これに対し分配落ち後の基準価額が個別元本を下回っている場合に出されるのが「特別分配金」。つまり元本割れしている状態で、そこに出る分配金は元本の一部払い戻しという位置づけのため非課税扱いなのです。決して特別でもラッキーでもありません。
4)譲渡損失と配当所得の損益通算
平成21年から譲渡損失と上場株式等の配当所得の損益通算が、確定申告で可能となりました。昨年からは「特定口座源泉徴収あり」の口座であれば、自動的に損益通算をしてくれるようになったのですが、「自分は特定口座源泉徴収ありを選択しているので、自動的にやってもらっている」と思っている方。念のためあなたの講座状況を確認してください。
厳密に言うと、「特定口座源泉徴収あり」というだけでは自動損益通算はしてもらえません。「特定口座源泉徴収あり」口座で、かつ「株式数比例配分方式」の登録が必要なのです。
特定口座が開始された頃から開設していた場合、当時はそのようなサービスはありませんから「株式数比例配分方式」の登録というのもありませんでした。
もちろんサービスが開始される前に証券会社からアナウンスは出ていましたが、良くわからないためそのまま放っておいた方も少なくないようです。この登録をしていないと従来どおり損益通算は確定申告で、ということになりますので、手間を省きたい方は登録を済ませておきましょう。
ただし今から手続きしても、今年の分は適用されません。
特定口座ができてから、損益管理が本当に楽になりました。ただし何でもやってもらえるということは、それだけ自分のアンテナが鈍りますし、放ったらかしになりがち。履行できる権利をみすみす捨てることにもなってしまいます。
また、年末になって気づいても年内に対応することは難しいため、自分の口座チェックは常に意識してほしいものです。
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