【2011年 第1回】 2011年の日本の課題 ~資産運用に必要な今どきの経済知識~
有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール
2011年。進展するグローバル化と財政の制約。その中で2011年は日本の行く末を決める重要な年となるかもしれません。
2011年。21世紀が始まり10年。この10年の世界はまさに激動。2001年の9.11同時テロ。2008年のリーマン・ショックなどの大きな波乱。一方その中でも変えられない大きなうねりは急速に進むグローバル経済。アジアや中南米などの新興国経済の成長。そのような中で2011年の日本の経済はどのようになるのか。TPP・法人減税・年金と社会保障の3点について述べてみましょう。ポイントはグローバル化と財政です。
1.TPP
TPP(Trance Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)。2006年にシンガポール・ブルネイ・ニュージーランド・チリの間で締結された自由貿易協定。他の自由貿易協定と決定的に違うところは、殆ど例外無き関税の撤廃。自由貿易協定としては非常に質の高いものであると同時に参加へのハードルが高い、ということです。
今までは比較的経済規模の小さな国家間の自由貿易協定でしたが、2010年にマレーシア・ベトナム・オーストラリア・アメリカ・ペルーが参加を表明。中でもアメリカという経済大国の参加表明で様相は一変。
日本も菅首相が2011年6月まで一定の判断を下すとのことである。
一方、農業などは多大な影響を被ると考えられるために、慎重な検討を関係者などから要請されている。
アメリカなどのTPP参加が果たして順調に進むか、このあたりはまだ未知数のところはある。ただし時代のスピードは速い。“慎重に検討する”ということは一見して正論に思えるが、果たしてそのような時間的猶予はあるのか。検討している刻一刻の間に日本経済は衰退していき、それが取り返し困難な差となっていくことも考えられる。
TPP参加を一時的に凍結したとしても、日本が衰退しても良いのなら話は別だが、そうでない限り今後アメリカやオーストラリアとの自由貿易協定の推進は避けられない。農業問題もあろうが、いままで保護した結果がどのようになったのか。攻めの農業に転じてこそ農業再生の活路があるのではないだろうか。
2・法人税減税
2011年の政府税制改正大綱で法人税の30%から25.5%の引き下げ案が公表されました。世界的にもアメリカと日本の高い法人税率。アメリカも法人税率の引き下げを検討している中で、日本の決断は当然のところでしょう。
しかしそれでも世界では高い方の部類。法人税は国際競争にさらされており、高税率の国から低税率の国へ資本は移動。高い税率のままでは企業が移転し空洞化が生じるでしょう。25.5%はゴールではなく今後さらなる引き下げする必要が出てくるでしょう。
3.消費税
とりあえずは封印された形の消費税の増税。しかし先進国には例のないGDPの倍近い政府債務。今の財政は持続不可能であることは明らかです。
2009年に年に基礎年金の国庫負担を1/3から1/2に引き上げましたが、恒久的な財源は決まっていません。とりあえずは埋蔵金を取り崩して手当をしています。家計に例えれば、多重債務者にもかかわらず収入の当てがないのに高額なローンを組み、ローン支払いは“へそくり”で対応し、“へそくり”が尽きた時には……。そこまでは考えてないのでしょう。
財源なしに、支出を決める。こんな馬鹿な話はありません。本来であれば国庫負担引き上げと同時に増税しなければらないはずです。若い人に“老後の年金は 安心してください”と言っても、財政の裏付けがない言葉を信ずるのは無理な話です。経済情勢を見ながら一刻も早い消費税増税が必要でしょう。
特に法人税減税の財源としても消費税が考えられます。“国民へ増税し大企業を優遇するのか!”と言われれば“その通りです”としか答えようが有りません。しかしそうしなければならないところまで追いつめられているのが日本の現状です。その意味で政治には国民に対し大きな説明責任が必要でしょう。当面の選挙を考えて増税を封印することは、将来の日本に取り返しのつかない禍をもたらします。
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