世界と比較した日本の貿易依存度【2011年 第6回】

【2011年 第6回】 世界と比較した日本の貿易依存度 ~資産運用に必要な今どきの経済知識~

有田 宏 (アリタ ヒロシ)⇒ プロフィール

 

貿易立国・日本の貿易依存度は?経済成長との関係は?グローバル化の嵐の中で船を進ませることが出来るか。単に漂流するのみか。

 

 

 

日本の貿易依存度は?

“グラフ1”をご覧ください。2007年から2009年までの主要国の輸出入合算の貿易額(サービス含む)の名目GDPに対する割合です。サウジアラビヤ やカナダなどの資源国の貿易割合が高くなっているのはうなづけると思いますが、目を引くのは韓国の驚異的な高さ。対して日本の貿易比率は貿易立国という割 に意外と高くなっていません。EUやアメリカとほぼ同じ比率です。もっともEUはここで反映されている数字はEU域内国とEU域外国との貿易。EU域内国 同士の交易は反映されていませんので、それぞれの国に分解してみた場合、もっと高い数字になると思われます。

このグラフから一般的に言えることは、貿易依存度の高い国は新興国と資源国。ただしブラジルのみが例外的に低くなっています。

貿易依存度と経済成長

 

“グラフ2”は主要国の2010年の実質GDP成長率予想(IMF:World Economic Outlook:April 2011)。1と2のグラフで比較する限り“貿易依存度と経済成長率の明確な相関関係は描けませんが、ここでも中国やインドをはじめとする新興国の成長率 が高くなっています。日本は2010年の成長率はかなり高くなると考えられています。EUはドイツなどは高い成長率(3.504%)が見込まれています が、一部の財務内容の悪い国が数字を引き下げています。

成長のために貿易を活発にするべきか

日本の貿易依存度は高くはない。貿易依存度と経済成長の明確な相関はない。それでは経済成長のために日本の貿易依存度を高める必要はないのであろうか。であればFTAをこれ以上進める必要はないのであろうか。

確かにFTAを進めて貿易を活発にしたところで経済が成長する保証はない。しかし世界中がFTAを進めている中で日本だけが取り残されることになれば…。 製造業が大挙して海外に退避することは予想されるでしょう。考えられることはFTAを推進しなければ日本経済は大きく衰退していくことでしょう。

2011年5月現在、日本では14の国・地域とのFTA(EPA)は発行もしくは署名済みです。しかし隣の韓国と大きく違うところは経済規模の小さい国が 多く、かつ大きな農業輸出国が無いという事です。FTAといえば日本では農業への影響が大きく反対論も根強い。そこで農業に影響が少ないところを優先的に 交渉してきたのでしょうか。

しかし今後は大国とのFTAが予想されます。オーストラリア・EUに始まりそして日中韓。さらにはTPPも今年中には何らかの判断をしなければなりません。

TPP自体も旧加盟国とアメリカなどの新規に加盟を申請している国の間で交渉中です。特に今までは太平洋を跨いだ小国同士のFTAでしたがアメリカが加盟 することでその性格は大きく変貌します。はたして今行われている交渉が順調に進むかどうか、まだ未確定の要素があります。

TPPは別としてもオーストラリアとの交渉は困難な農業交渉が伴います。そのためにも何等かの農業対策が必要なのは理解できますが、基本は農業を保護することではなく競争に耐えうる農業を造ることです。

食糧安保という事もあり一定程度の保護は必要かもしれません。しかしやみくもに補助金をばらまいていて競争から隔離するような計画経済的な手法では、農業 はますます衰退するのみでしょう。万が一のための食糧の安心は一種の便益を国に与えている。すなわち農業は市場経済の失敗の一つの外部経済を国民に与えて いる、と考えれば、保護の仕方も変わってくるでしょう。

TPP(環太平洋経済連携協定)の行方はまだ不確実な要素がありますが、日本にとっての本丸の農業を開国しなければ、日本は太平洋を漂流することになるのではないでしょうか。

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